柳之貓

劇場版メイドインアビス 深き魂の黎明の柳之貓のレビュー・感想・評価

4.5
テレビ版で十分にヤバかったが、まさかそれを軽く越えてくるとはね。

映画的な見せ場があったものの、それなら今までの事は何だったのだ?と思ったが、そう考えるならリコの一度折れた腕も無意味だったのだろうか。
で、結局は元の木阿弥。話はつけたとナナチは言ってたけど、あの所業がまた繰り返されると思ったら見過ごせない気持ちになった。
しかし、パナマ文書やらエプスタイン島など、白日の下に晒されたものが根絶されただろうか?大きな流れ、強い力というものは結局は変えられないのではなかろうか。

いやぁ〜作者は性格悪いね、よくもまぁこんな事思いつく。単なるエログロナンセンスなら打ち捨てられるが、なまじ或る視点からの道理みたいなものを取り混ぜるから、問題が複雑化する。黎明卿が愛を語る事すらデタラメじゃないのには、むしろ感心した。
しかし、作家がよく言う「キャラクタがストーリーを進める」って話、カワイイ絵で生み出した作者が、キャラを生き生きと描き笑わせ、そして泣かせ、物語を進めさせる…ともすれば描き出したいものの為に、断腸の想いで歯を食いしばって描いているのかも知れない。何とも計り知れないな。

アビスの理屈を受け入れてるリコは、感受性が豊かなレグよりもよっぽどシビアだと思っていたから、ボンドルドの"リコはこちら側に近い"と言う言葉にはハッとさせられた。
でも、ミーティの下りにリコがいたらドライ気味だったかもとも思っていたが、それは全く的外れだったな。
振り返って見れば、リコ刺し身で嫌な予感がしたのは間違いなかった。カートリッジも、実は似たような事をやっているのだが、リコや視聴者は勝手な思い入れで、片一方をだけを殊更大袈裟に捉える。実にイジワルな構成になってる。ポスター絵も、鑑賞後に観ると何か泣きそうになるし。

しっかし、ナナチに原罪のようなのを背負わせてたのは心が痛んだわ。リコの治療が出来た事の辻褄も合ってるからウンザリする。随分とまぁ畳み掛けて来るもんだ。

白笛の秘密とか、中々深刻な設定が出てきたが、今までキレイ事に見えていたもののベールが剥がされてきた感じ。
散々、輝かしい未知とそれに匹敵する闇とか、自殺とか死とか、祝福と呪いだとか言われてるのに、ついつい悪いことは忘れてしまってるなぁ。
ライザの事とかリコの父親とか、今後も一筋縄では行かなそうだ。

でもそうなると、シーカーキャンプでライザの白笛をカリカリやってたオーゼンって、やっぱヤバいわw
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