amu

王様になれのamuのネタバレレビュー・内容・結末

王様になれ(2019年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

岡山天音さん目当てで鑑賞。
若手の中で一際光る名バイプレイヤーの彼が主役を演じており、この作品での演技もとても良かった。

the pillows というバンドの曲を初めて聴いた。つまりバンドのことを全く知らない私などが観て良いのだろうか、、と恐縮の気持ちに若干なったが、初めてでもすぐ好きになってしまったくらい楽曲も雰囲気もかっこよく、素敵なバンドでした。BUSTERS(the pillows のファンのことをBUSTERSというらしい)の方にとっては非常に胸熱な作品であったろうと思う。

今作を観ながら、かつて私には写真家になる夢を持った友人がいたので(数年前にその夢は諦めてしまったのだが)、その友人のことを終始思い出していた。

プロのカメラマン、写真家になるにはスタジオで下積みを経て最終的に独立する手段が王道で、撮影ライティング(照明)の技術でプロフェッショナルとなり、尊敬する写真家のアシスタントを経て、独立する。

私の友人はスタジオを自ら途中退職し、アルバイトをしながらあらゆる写真の賞レースに作品を出し、そこからプロになるという王道手段に拘らない自分のやり方で道を切り開こうとがんばっていた。

世の中にはめちゃくちゃ上手いのに数え切れないほど売れないバンドや芸人がいるように、写真の世界もプロになれるのは一握りで難しい。でもその夢を追いかけ、挫折を繰り返し、また立ち向かう姿は何より美しいものだと思う。今作で岡山天音さんが演じたそんな主人公の姿はとても美しかった。昨日観た「そして僕は途方に暮れる」の主人公と真逆である。

身体を壊してまでがんばる必要は全く無いけれど、ちょっと嫌だったからと逃げる道をすぐ選んでしまうよりも、一度死にたいくらいの挫折を経験してから立ち上がった者はいろんな意味で本当に強いと思う。

いい師匠についたねと思うし、周囲の人に恵まれていたと思う。厳しい言葉を言われたら即ハラスメント!じゃなくて、あのネギ抜きラーメンも、アー写の失敗も、その頃の彼から目まぐるしく成長できたのは周囲の一見厳しい大人がいたからこそと思う。もちろん、そこから逃げ出さず乗り越えた本人のがんばりが何よりのもので。

バンドのことを知らなくても楽しめたし、一人の主人公のまさに「逆・ボーイズオンザラン」として、とても素敵な作品でした。

エンドロール中に映し出された現在に全わたしが泣いた。
amu

amu