半兵衛

ああ爆弾の半兵衛のレビュー・感想・評価

ああ爆弾(1964年製作の映画)
3.8
コーネル・ウールリッチ(ウィリアム・アイリッシュ)によるミステリーを能と狂言でひたすら茶化しまくるという、あまりにもクセの強いミュージカル映画を映画黄金時代に作ってしまう岡本喜八監督はぶっ飛んでいるとしか思えない。物語もヤクザとマンガのハイブリッドという現代でも見る人を選ぶ作風になっているのにリアルタイムで鑑賞した人のあきれようはどれほどのものだったのだろう(実際この映画が原因で岡本監督はしばらく干されることに)。

でも喜八流のテンポのよい演出と梨園の出自を生かした伊藤雄之助の快演、そして和洋の音楽をバランスよく配合する音楽担当の佐藤勝によるナイスな仕事ぶりがはまれば不思議と楽しくなって何度も見てしまうスルメみたいな作品になっているのも事実。

歌手なのに一切歌わせてもらえず宗教にハマりひたすらドンツク太鼓を叩いてお題目を唱える越路吹雪や、伊藤雄之助をサポートする砂塚秀夫、ドライなヤクザを演じる天本英世も最高。そして日本で気の弱いか運転手役を演じさせたら日本一の沢村いき雄の名演に笑い泣かされる。

原作の肝である「爆弾」をこう使うかというアホらしいけれど邦楽ミュージカルとして決まりに決まったラストに感心、そこでの砂塚秀夫の顔が素晴らしい。
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