クレメンシー
甥の結婚式からの帰りの新幹線内でレビュー中。
本作は、冤罪の死刑囚が死刑になり死ぬまでの物語だったよ。
実にやり切れないな。
本来、死刑になるべき真犯人がのうのうと生きているのに、そのクソ野郎が犯した罪により、何もしていない自分が代わりに死刑になる。
これほどまで無念なことも無かろう。
そして、冤罪であることを分かっている人間を、自らの指示により死刑に処さねばならない刑務所長の心に負う重荷を、誰が理解してやれようか。
そのような映画だったよ。
確か10年ほど前に、米国で実際に無実の罪で死刑になった黒人男性が、当時の現地ニュースで幾度も取り上げられていた記憶がある。
人権保護団体が刑務所の周囲に集まっている光景が流れていたのを覚えているよ。
無念のその死刑囚の名前を失念してしまったが、あの出来事が本作に酷似しているように思う。
本作を観ることで、あの無実の死刑囚の無念さの片鱗だけでも感じ取ることができるように思う。
ショーン・ペン主演、スーザン・サランドン助演の『デッドマン・ウォーキング』は、死刑囚が最期に罪を告白して終わるという結末だったが、本作は全く真逆のテーマだ。
人間が人間の罪を裁くことは本質的には不可能である、ということを本作は語っていたよ。
刑務所長が最後に流した涙は、死刑囚が受ける傷と同じくらい深く、似て非なる形の傷を幾度も繰り返し負った心から流れでていた血の涙だったよ。
刑務所長を演じたアルフレ・ウッダード氏の迫真の長尺演技は、賞賛を超えて尊敬に値するものに感じたよ。
お見事だったよ。
死刑囚と刑務所長と共に、観る者の心が涙を流す、過酷で不条理で残酷ながらも、素晴らしい映画だった。
ありがとう。