じゅ

バーデンのじゅのネタバレレビュー・内容・結末

バーデン(2018年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

burden
荷(物), (特に)重い荷物, 荷物運び, (義務・責任の)重荷, 負担, (心の)重荷, 心配, 苦しみ, (船の)積載力, (歌の)折り返し(句)

っていう訳を視聴前に調べてたけど、スペシャルサンクスにマイク・バーデンとジュディ・バーデンの名前があったということは人名としての『バーデン』なわけか。
トムがマイクにKKK博物館とレッドネックショップだかの権利書的なのが譲渡するところとかあったから、そんなんを指して「 (義務・責任の)重荷」と言ったかなーと思いながら観てた。違った。


KKKの一員の男マイク・バーデン。父親代わりのトムと10人くらいの仲間たちとずっと生きてきた。回収業者で金を稼いで念願のKKK博物館とショップを開店する。そんなマイクが恋したのがジュディ。クランの一員でない彼女のため、マイクはクランからの脱退を決意する。今まで家族同然だった元仲間たちは一転し、警察と結託してマイクとジュディから家と職を奪い、集団で襲い掛かるようになる。それでもマイクは元KKKである自分を使命感から拾ってくれたケネディ牧師に助けられ、自らのこれまでの行いを悔い改めて憎悪と暴力の世界から脱する。


RehabHateのハッシュタグでなんかしてECHO劇場の反差別の活動を金銭的に支援すると劇場のレンガに名前が刻まれるとかなんとか。そんな話だったっけ。
Rehabはrehabilitateのことみたい。「社会復帰させる, (…に)リハビリテーションを施す, 地位・権利を回復する, (…を)元の状態に戻す, 修復する, 復興する」。本作って1980とか90年代が舞台だったっけか。長いリハビリはまだ続いてる。

KKKって元々、南北戦争直後に南部同盟から復員された兵がつくった社交クラブだったらしい。戦争中の思い出を語り合って交友を保つための会だったけど、南部は奴隷から解放された黒人とか北部から来たならず者共のため混乱の最中だったから、彼らは家庭を護る自警団になった。同時に、戦争で失った南部の自主権回復を目指す秘密結社になったとのこと。共和党の南部再建計画に反対して、白人優越主義を掲げ、今ではお馴染みの格好で黒人を襲うようになった。
青木冨貴子さんの『「風と共に去りぬ」のアメリカ』で解説されている、って世界史の窓のページで解説されてた。

雑にまとめると、退役軍人クラブから始まったのが時代のえげつないゴタゴタがあって、今日ではよく知られてる対黒人テロ部隊が出来上がったわけか。解散を命じられて衰退してまた水面下で復活してまた取り締まられて、ってのを繰り返してて、今もどこかで潜行してるとかしてないとか。
まあしてないわけないだろうな。せめて保安官が露骨に不公平になるようなことはなくなっててくれりゃいいけど。


憎悪と暴力のKKK(トム)側と、愛と対話のケネディ牧師側と、ってかんじにハッキリ分かれてた印象。ケネディ牧師"側"というか、ケネディ牧師本人か。息子の友人がマイクにブン殴られまくった後、息子らは報復に向かって、それをケネディ牧師が止めてた。
(息子の名前何だったっけ?SI単位系みが強かった気がする。ケルビン?)

そのケネディ牧師は父親を白人にリンチされて殺されて吊るされたんだったっけか。それの後牧師になって、さっきまで敵意剥き出しのKKKだったマイクに手を差し伸べて、でも実は息子と妻が嫌がっていたように自分もマイクに宿を与えることなんてしたくなくて、ぶっちゃけ嫌悪する敵を助けるためにわざわざ大切な大切な家族から嫌わる役に回ってたと。聖人すぎんかケネディ牧師殿。
アンドリュー・ヘックラー監督がケネディ牧師を知って彼を題材にした話を描いたみたいなこと読んだ。まあWikipedia情報だけど。本当なら道理でこの主役感か。題名は『バーデン』なのに。

ケネディ牧師の人間味が皆見えた描写があったけど、KKKの連中かてまた普通の人間ってのが表れてたな。彼らなりに信念と熱意があって、仲間想いで、レースに心血を注ぐ。
それゆえマイクの抜けづらさの根拠の1つになってたし、抜けたら抜けたでその人間を一気に攻撃対象にする異常さが際立ってた。小規模なマフィアとかカルテルとかの犯罪組織みたいだったな。


マイク・バーデン本人曰く「心の壁にジュディが小さな穴を開けて徐々に広がっていった」ってことだったか。本作ではそんな素晴らしい奇跡を見届けたわけだけど、そんな奇跡そうそうあるもんじゃない。ともすればケネディ牧師が必要になるだろうけど、そんな奇跡の人も到底現れると思えん。すると一人ひとりはケネディ牧師ほど頑張らなくてもRehabHateしていけるように団結してかなきゃならんよねって話になるか。ECHO劇場のどうのこうのもそりゃあ必要なわけだ。

No justice, no peace!
じゅ

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