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ゴーストバスターズ/アフターライフのsomaddesignのレビュー・感想・評価

5.0
追悼アイヴァン・ライトマン
ギリギリ間に合って良かった…

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破産寸前で家賃を払えず立ち退きを余儀なくされるキャリーと二人の子供たち。生前の父が遺した田舎の古い屋敷を頼りに、オクラホマ・サマーヴィルに移り住むことに。長年原因不明の地震が頻発するサマーヴィル。ある日キャリーの娘フィービーは、屋敷の地下に研究設備を発見。祖父がかつてニューヨークを救ったゴーストバスターズの一員だったことを知る。

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何度も頓挫しつつも、いつかきっとまた続編が作られるはずと期待の大きい「ゴーストバスターズ3」。シナリオの難航、度重なる金融危機による資金難で製作中止……そうこうしてるうちにイーゴンことハロルド・ライミスは亡くなっちゃうし、リック・モラニスは夭逝した奥さんと残された二人の子供たちのために俳優活動を休止。環境局の嫌味な役人を演じたウィリアム・アザートンは役のせいでバーでよく喧嘩を売られる始末。結局続編は諦めてリブートに舵切りしたのが2016年。アイヴァン・ライトマン監督は降板したけど、ポール・フェイグ監督が引き継いで仕切り直し……たものの、興行的には失敗。批評家にもファンにも不興を買ってしまう。(現代のミンストレル・ショーとの批判も)

ことほど左様に長らく続編を期待されながらも、なかなか実現できなかったシリーズは、2016年版を別ユニバースの物語として完無視することで再びリスタート(ついでに「ゴーストバスターズ2」もスルーされてる気がする)。そもそもの構想に戻って次世代へのバトンタッチ映画に変えて大正解! 映画自体アイヴァン・ライトマン監督から息子のジェイソン・ライトマン監督に親子バトンタッチするとは思わなんだ。親子二代で作った映画シリーズって聞いたことないよ。(親子揃って映画監督なのは珍しくないけど)

負け犬たちのワンスアゲイン映画でもあった第1作の精神そのままに、現代のジュブナイルに転生させちゃった。一応孫世代が主人公だけど、キャリーの物語として見るとより熱い。父親の愛を感じられなかった少女が、父親の足跡を辿ることでその人となりを立体化してく話だし、残された人が逝った人たちをそうやって追悼する映画としても泣ける。まるでお葬式で故人の思い出話を語り合うようで、それぞれから見た故人の話で、いないはずの人の姿が立ち上がるような作り。
(田舎町なのに人種構成が多様だし、余所者をあっさり受け入れちゃうので孤立した家族に見えなかったけど。)


序〜中盤の徐々にゴーストバスターズの痕跡が現れてくかっこよさ。ちょいちょい「I ain't afraid of no ghost」「Who you gonna call?」ってテーマソングの有名なフレーズがセリフに散りばめられてて、観客が思わず「Ghostbusters!」て合いの手入れたくなるアホな仕掛けが楽しい。
吹き出た消火栓に洗われてロゴが見えるシーンとか超カッコ良い。

新しいガジェットの数々も、レトロかつ手作り感あって好き。
ギリギリ人の手で作れそう&少ない資金で改造できそうなレベルに留めてるのも素敵。

フィービーを演じたマッケナ・グレイス。てっきり新進気鋭の子役かと思いきや、既にキャリア10年のベテラン子役(?)っぷり。理系でナードなキャラクターだからって陰鬱な引きこもりじゃない。ちゃんと子供らしい明るさや、快活さのある描かれ方なのが印象的。

「ストレンジャー・シングス」シリーズで知られるフィン・ウルフハード。なんだかもう近年のジュブナイル映画には悉く出ている気がする。数年前まではテーブルRPGとチャリンコが似合う少年だったのが、いつの間にか車を運転できる年齢に成長してることに驚き。

フィービーのクラスメイト・ポッドキャスト。誰からも相手にされない孤独な少年の姿は、1作目の博士たちにも重なる。レイモンドやイーゴンの子供の頃を連想させる猛進っぷりが可愛い。多様性キャスティングのせいか、アジア系のローガン・キムが演じるが、おしゃべり役をアジア系に担わせるのは80年代の描かれ方っぽい。前進したようで後進しちゃった感もする。(ポッドキャストが喋ってるシーン自体は好き)



(以下ネタバレあり)
クライマックスのご本人登場パターンの良さったらない。涙出るかと思った。
ピーターのピンチの時ほど冴える軽口を30年以上ぶりに聞けた!残ってるメンバーみんなが生きてるうちに続編ちゃんと作れて良かった!


細かいとこ気にしだすと夜しか寝られない。自分の理解力が足りないせいか、イーゴンが亡くなった理由と、霊体として残れた理屈が分からなかった。子供や孫がいつか自分の遺志を継いでくれることを予見してたのか、屋敷内の仕掛けや残された設備の謎。もうちょっと分かりやすく警告文を残しておいてくれても良くない?
家に不用意に人を近づけないために、わざと奇人変人を演じてたにしても、ピーター達にはもっとちゃんと説明しとこうよ。ホウレンソウ大事。


2016年のポール・フェイグ版がホントに完全に無かったことになってるのが笑う。(実際、ゴーストバスターズシリーズをまとめたブルーレイ『アルティメットコレクション』には収録されずシリーズから除外。ポール・フェイグは「ソニーさん…(中略)…これはただのうっかりだよね?」とツイート😆)ポール・フェイグ版、すこぶる評判悪いけど、個人的には悪ノリ全開で好きな作品なのでちょっと悲しい。



余談)
感想をまとめるのに手間取ってたら、2022年2月12日にアイヴァン・ライトマン監督が自宅でお亡くなりになられてしまった。自らイーゴンに扮したシーンが、名実ともに次の世代へのバトンタッチに見えて泣ける。ビル・マーレイやダン・エイクロイドらオリジナルキャストが辛うじて存命なうちにリブートできて良かった! 


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