NM

閉鎖病棟ーそれぞれの朝ーのNMのネタバレレビュー・内容・結末

閉鎖病棟ーそれぞれの朝ー(2019年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

閉鎖病棟というか、田舎なので外との交流がほとんどない普通の精神病棟。別に檻に閉じ込められているわけでも拘束されてもいない。その点でタイトルは紛らわしい。別にホラーでもない。
彼らは毎日作業療法など平和な生活をしているが、あるとき物騒な事件が起きる。
彼らの抱える様々な事情と葛藤、そして再生を探る物語。
ラストシーンがとても私の好みだった。彼の行動が何を意味するか無言で示されている。
自分には価値がない、生きる意味はないと思ってはいても、もう一度頑張ってみたい、頑張れるはずだという気持ちは意外と最後まで残るもの。
個人的にはストーリーは重すぎず、複雑過ぎない印象。
ほかの患者たちが絵に書いたようなカンジャでちょっと冷めたが演出上仕方ないのかも。

地方の、更に山の上にある精神病院。
様々に事情のある人がともに暮らしている。
症状の重さも種類も様々。社会的入院の人も任意入院の人も。
そしてこの病棟には個性豊かな面々が集まっている。

ある日引きこもりで無理やり母に連れてこられた18歳のユキ。
実は妊娠を隠しており、隙を見て屋上から飛び降りた。
奇跡的に怪我だけで助かったが、希死念慮で入院。

ここで暮らすツカモトという男に、妹夫婦が面会に来た。
母の痴呆が進んだので施設に入れたい、そして空いた家を売りたいという相談だった。
ツカモトは一見冷静で普通に見える。もとは何かの精神的発作が出て以来、時々幻覚幻聴が見え、混乱して暴れることがある。
ずっとこの妹夫婦が彼の治療費や母の介護費を賄っているらしい。

施設内の陶芸作業室にはよくヒデさんがこもっている。みんなに慕われている車椅子の人物。
彼は元死刑囚だが、執行が失敗し更に脊髄障害を負ったのをうやむやにするため実質ここに隠されている。
彼はユキに語る。ここに長くいるとどんどん「患者」になるから出れるなら早く出たほうがいいと。

ユキの父母が迎えに来た。実はユキを妊娠させたのはこの義理の父。
義父はすぐユキを連れ帰った。
ユキは母に男と別れるよう頼んだが、母は娘のほうを追い払った。
ユキは行くところがない。再び病院へ戻ってきた。
孤独なユキにヒデさんやツカモトが親切に接した。

元麻薬中毒の患者シゲムネがまた暴れだした。常に暴力を振るうので嫌われている。
止めに入ったヒデさんに、親と妻を殺し死刑でも死に損なったのは本当か!と怒鳴った。
固まるヒデさん。
周りの患者はどうもその噂を知っている様子。(この病院はなぜか患者間で個人情報がダダ漏れ)

彼はむかし妻と寝たきりの母と三人で暮らしていた。
仕事から帰ると、面倒を見に来ていたはずの役場の男と妻が浮気している現場を見て、かっとなって二人を包丁で刺した。
絶望し、さらに母を自らの手で絞殺したのだった。

ヒデさん、ユキ、ツカモトはそれぞれ深い事情があることを感じ取り、徐々に仲良くなっていった。

若いユキに目を着けていたシゲムネ。
一人きりのところを狙い、散々殴ったあと暴行した。
(この病院は職員の目が届いていないのか喧嘩も暴行も咄嗟に患者どうしで空き部屋に入ることも可能)
しかしユキやツカモトらとも仲の良かった患者昭八っちゃんがそれを目撃。何もできなかったが決死の思いでカメラに収めていた。

翌日からユキの姿が見えなくなったそのカメラのデータを見て理由を知ったヒデさんとツカモト。
写真を公開することはユキの意思に叶うとは思えない。ヒデさんの意見で全部消してやった。
ツカモトは発作を起こしかけうまく行動できない。

シゲムネのもとへ一人で向かうヒデさん。
もみ合いの末、再び殺人を犯し連行されていった。
患者たちは嫌われ者をやっつけたヒデさんは悪くないと口々にかばった。

ヒデさんは何も語らなかったようす。
動機が分からず二度目の殺人となれば、裁判は厳しい。
しかし言えばユキの尊厳に関わる。

ツカモトは母の面倒を看るため自ら退院を決め、地道に働いた。
そしてヒデさんの公判が始まったことを知り裁判所へやってきた。
そこへユキもやってくる。

ユキはあの日施設を飛び出した。
ヒデさんにはあれ依頼会っていなかったが、新聞を見て証言をしに来たという。
髪にはヒデさんがくれたシュシュ。

公判でユキを見て驚くヒデさん。
証人に立つと、まず名前住所年齢職業を答える。いまは看護師見習いらしい。
そしてあの事件のことを語る。
このまま消えたかったが、シゲムネが殺されたことを知り生きてこれたという。だからヒデさんにも生きてほしいと訴える。
その気持ちに涙を流すヒデさん。

拘置所に戻ったヒデさんは、もう一度自分の足で歩けないか試してみるのだった。
NM

NM