S田

閉鎖病棟ーそれぞれの朝ーのS田のネタバレレビュー・内容・結末

閉鎖病棟ーそれぞれの朝ー(2019年製作の映画)
2.9

このレビューはネタバレを含みます

全体通して演技や演出、音楽などのクオリティが高かったです。

ストーリーはメインの患者さんを追う形で掘り下げをしていく、院内の日々の生活を不穏混じりに描いていく途中はストレスなく引き込まれて行ったのですが後半は……内容が……という印象でした。

レクリエーションで使われたポップな手作り看板も「院内カラオケ大会」というやる気のない言葉選び、トラブルも誰かが騒ぎ出して収拾つかなくなるまで眉を顰めるだけだったので「院内の職員さん方も形だけレクを与えてあげられれば良い」「精神病患者に寄り添う事を諦めているなどで断絶がある」などの描写かな?と思いながら見ていたら職員は最後まで患者に寄り添う心強い味方として描かれていてええー……となりました。

時代設定もいつのものなのか判然とせず、買い物に出る患者に対して陰口の叩き方も今どきそんな……というテンプレな言葉選びで、
『病院の外に居場所などないもの達のドラマの為』田舎の精神病院設定をチョイスしたんかなという印象でどんよりしました。
地名もはっきり出す割に院の内外問わず長野の方言全く出てきませんし。

ユキちゃんが何のために酷い目にあいつづけていたのかいまいち意図が掴めず、これは誰の物語なの?という印象ばかりが残ります。
おそらく三人全員がそれぞれ主人公なのだと思いますが、ユキちゃんが次々乱暴され暴言を吐かれボロボロになることは少なくともユキちゃん一人が主人公なら描かれることも無かったのでは……と思うとそれで感動のシーンのように纏められるとなんだかなあ……という気持ちです。
目を離した隙に監視対象の男が居なくなってその後患者も一人戻っていないのに夜中まで誰も小屋を覗こうともしていないのなんだったんですかね……

何十年もの間、一歩も歩いてない脚で震えながら大地を踏みしめようと力を込め体を起こしたシーンでスタッフロールが流れるエンディングもそこまでのドラマが勇気づけられるものであれば良いシーンと思えましたが、後半ずっと理不尽な描写を見続けていたので「いや1年歩かなくても筋肉衰えて立てないのにそうはならんやろ」で視聴を終えることになってしまいました。

妻を寝取られ母に認識して貰えず、衝動的に殺してしまった後も後を追うことが出来ず病院で生きてた男が、
レイプ男を殺すシナリオも過去の事重ねてるのかなんなのかという嫌なチョイスで、結局黙って被害者が事件の事を話してるのを聞いてるだけになっていたなら最初から表沙汰にするか自分だけで抱えるシナリオにするわけにはいかないのか?とモヤモヤが残ります。

ただ全員演技は良い……
好きでは無いけど出来の良い映画だったなと思います。
S田

S田