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閉鎖病棟ーそれぞれの朝ーのMypointofviewのレビュー・感想・評価

閉鎖病棟ーそれぞれの朝ー(2019年製作の映画)
3.7
どの役も演技派揃いで、どの役も作り方がしっかりしていて、個性的にしあがっていた。

幻聴が聴こえて暴れるようになり、妹夫婦から疎まれ入院することになった、元サラリーマンのチュウさんを演じた綾野剛さん。日常は穏やかで優しく魅力的ですらあるのに、ストレスが限界値を超え溢れると、幻聴が聴こえ、精神運動興奮からくるのだろうか、発作が起こり、不安につぶされ暴れ出してしまう。まさに病気がそうさせているのだが、まっすぐに向き合い芝居をし、チュウさんのあらゆる一面をしっかりと盛り込んで、とても魅力的な人物として作り上げ、生きていた。

わからなかったので調べてみたら、「精神運動とは‥精神活動が行動や発話など運動面に反映されることを指す。精神運動興奮は,意志,欲動が亢進して運動面に反映される状態であり,運動が統制できず激しい運動過多となる。精神運動興奮は,双極性障害の躁病相,統合失調症等で出現する緊張病性興奮,覚醒剤などの物質乱用で出現することが多い。」とのこと。

病気のことを、しっかり勉強して、真摯に取り組みたい。普段は普通だが、何かきっかけがあるとこうなってしまう、本人にとって非常に困難な状況にある人を、私はしっかりとこのように表現して、作品を通して想いを伝えられる役者になりたい。

父親からのDVが原因で入院することになった女子高生の由紀を演じた小松菜奈さん。彼女のお芝居は、嘘偽りなく、本当にその場に立つことのできる人なのかもしれない。裁判のシーンで、鶴瓶さんの受け芝居を見ていて、小松菜奈さんのお芝居のパワーを感じた。

道端に座り込んで、空を見上げて泣いていたシーンも、そのあとコンビニで買ったおにぎりを食べるシーンも、夜明けを見た時のシーンも、芝居芝居しておらず、確かに本当にそういう状況になったら、人って案外辛い時ほど平気な顔をしているなっと。彼女の今回のお芝居からは、なんとなくそれを感じた。

平山秀幸監督の違う作品も観てみたいと思った。