河

メトロポリスの河のレビュー・感想・評価

メトロポリス(1927年製作の映画)
3.8
150分のバージョンを見た。
労働者を動力源にしながら動く機械を地下として、メトロポリスの上にはそれを築いた父やその子、博士が楽園として住んでいる。地下から労働者の子供を連れて現れたマリアに惹かれて、主人公は地下に降りていく。そこで労働者が機械に生贄のように捧げられているように労働を幻視する。頭脳と手を心で繋ぐ、知的生産階級と労働者階級の和解を目指す存在としてマリアがいて、それに対して人間や機械を破壊するために労働者を反乱に導く存在として博士とマリアの姿をしたアンドロイドがいる。その悪のマリアであるアンドロイドと共に7つの大罪が解き放たれて、労働者達は欲望に忠実に動くようになり機械を破壊する。ただその機械が街を支えているため、犠牲になるのは労働者達自身で、それに対してマリアと主人公達は自己犠牲的に人命救助を目的に行動する。それによって父も労働者達も改心させられて、上層と下層の和解が果たされる。舞台であるメトロポリスの構造がバベルの塔の建築と重ね合わせられていたり、聖書的なモチーフが引用されている。
近代化する社会に対しての命令口調の映画、当時の大衆に向けた神話って意味では『ドクトル・マブゼ』『ニーベルゲン』などのこの監督の以前の作品と共通するけど、後半がほとんどアクションシーンに当てられていることもあり、後半からはそのアクションに従属するような形で話が作られているような感じがあって、あまりそこが前景化してる感じはしなかった。ただ、そのアクションもその警句みたいなものを大衆に向けて伝えるためのものなんだろうとも思う。
『ニーベルゲン』に引き続きモブシーンが圧巻で、さらにそのモブシーンに洪水が迫ってくるだったり通路が限られていたりなど舞台的な制約を入れているのも共通する感じがした。今のハリウッド映画の元を作った監督なんだろうと思っていたけど、少なくともこの映画に関してはハリウッドに実際に行った経験から作られたものらしい。
映画を見るときに役者の表情やセットなどの細部をあまり見ていない節が自分にあって、それもあってかあまりはまらなかった。
ジョルジオ・モロダーが音楽当てたバージョンもあるらしいのでそれも見たい。
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