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貞子のYNのレビュー・感想・評価

貞子(2019年製作の映画)
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感想を一言でいうと、

中田秀夫、「リング」見たことないのかな

↑もちろんこれは皮肉であって、「リング」の監督が中田秀夫であることは百も承知です。
(わたしのリングへの愛をしたためたレビューはこちら
https://filmarks.com/movies/7374/reviews/40233730 )

本作は、「リング」並びに「リング2」の「正統な続編」という位置付け(1978年「ハロウィン」に対する2018年「ハロウィン」のような)にも関わらず、過去作の設定が都合よくねじ曲げられ、しかもねじ曲げた割にべつに新鮮味もなく面白くもないという、かなり地獄みの高い出来になっている。

何がすごいって、中田秀夫は「リング」における「貞子の恐怖の核」を全く理解していない。
貞子が怖いのは、「人間よりも高次の存在である」からだ。貞子は人間の命を掌握する。自分の目的のために利用する。
圧倒的に孤独で、たった一人、世界から迫害されて拒絶された貞子は、世界を掌握することで復讐をする。だから貞子は怖い。呪いからは逃げられないからだ。

「リング」以外の貞子関連作品は全てこの点が描けていない。
「ザ・リング」シリーズでは「理解できない子供への恐怖」(これはアメリカホラーでよくモチーフになる)、「貞子3D」では「虫などへの生理的嫌悪」まで引きずり降ろされた。

果たして、今作でも「貞子の復活」はなかった。貞子の歴史は改変され、矮小で陳腐な「理由づけ」をされて利用されてしまった。
これってつまり、中田秀夫は自分で撮っておきながら、「リング」のストーリーを理解していなかったということじゃないのか。

ストーリーだけではなく、映像、音、演出全てにおいて、「リング」とは程遠い、一般的なJホラーの基準で言ってもやや駄作寄りのいけてない出来だ。
全てのショットに緊張感がなく、恐怖シーンもないのがびっくりするシーンすらもほぼない。
脚本が全体的におかしいのは脚本家の罪だとしても、「リング」には良い絵がたくさんあったのに、なぜ同じ監督が撮ってこんなことに…?

取ってつけたような呪いのビデオ的なものもあるが、「リング」の呪いのビデオをyoutubeで一回見たことがある人が、記憶だけを頼りに手元にあるもので再現してみました、みたいな…ああもう言えば言うほどにむなしい。

どうしても「リング」との比較に終始してしまうが、「貞子」単体で言うと感想はこうだ。

「これ、貞子の話じゃなくね???」


※ まだ言いたいことは沢山あるので、コメント欄でネタバレにして書きます。
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