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アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場のKUBOのレビュー・感想・評価

3.5
6月2本目の試写会は「アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場」。

第二次大戦前、フィンランドはソ連にカレリア地方を侵略され国境を後退させられていた。1941年、ナチスドイツと同盟を結んだフィンランドは、カレリアを取り戻すためにソ連に侵攻する。

主人公は、百戦錬磨の兵士ながら上官であっても言いたいことをズケズケと言うロッカ。ソ連によって家と農場を奪われたロッカの心情はよくわかるが、ナチスと組んだ時点で先に待っているのは敗戦しかない。そういう意味で日本の戦争映画に通じる雰囲気がある。

タイトルの”Unknown Soldier”が示す通り、作品は「名もなき兵士」の視点で前線を転戦しながらの小隊の戦いを追って描かれる。逆に言えば、ヨーロッパ戦線を大局で見た解説などは一切入らないので、唯一テロップで入る西暦から類推するしかない。

戦闘そのものも「ハクソー・リッジ」とか「プライベート・ライアン」なんかを見てきてる人には、小競り合い程度にしか感じないレベルかもしれないが、それでも132分飽きずに見られたのは、ロッカを始めとするキャラクターが魅力的だったことと、戦いがスペクタクルの規模まででかくなっていないことが、かえってリアルに感じられて緊迫感があったからだろう。

地続きの場所が戦場だと、休暇をもらって家に帰れるとか、日本の戦争ものではあまり見られないシーンも。さらにフィンランドだけに家にサウナがあるのにビックリ!

「人ではなく敵を撃つ」

最近流行りの「敵国人も人間だ」みたいなヒューマンな解釈は一切ない。戦争は殺し合いだということを嫌というほど見せつけてくる。

ミリタリーファンには「T-34」らしきソ連製戦車が、特撮じゃなく実機で登場するのもうれしいところだろう。

ノルマンディー上陸作戦後、ソ連との東部戦線からドイツが撤退したタイミングで、ソ連とフィンランドは休戦協定が結ばれるが、その裏には常に前線で戦い続けた名もなき兵士たちがいたのだ。

第二次大戦の敗戦国でフィンランドだけが他国に占領されなかった。

フィンランドでは100万人以上動員し、その年の興行収入第1位という本作。戦勝国側からではないから戦争の悲惨さをちゃんと伝えられるんだと思う。地味だけど見る価値はある映画だ。
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