時の流れへの抵抗
新型コロナウィルスの感染拡大で公開が一年延期された作品。『関ヶ原』と同じく、岡田准一と原田眞人のコンビによる司馬遼太郎原作小説の映像化。背が高かった土方歳三を岡田准一が演じるということで、違和感があるかと思ったけど、殺陣が素晴らしく良かった。『関ヶ原』では、役所広司の徳川家康と平岳大の島左近にだいぶ持っていかれて存在感が薄まった石田三成だったけど、今回は土方歳三が記憶に残る描かれ方だった。鈴木亮平の近藤勇と伊藤英明の芹沢鴨がハマり役で、見ていて安心感があった。結核で儚く散る沖田総司の感じも山田涼介は出せていたと思う。ウーマンラッシュアワーの村本とはんにゃの金田の登場は意外だったけど、独特の存在感があった。尾上右近の松平容保は切なさを十分発揮していた反面、徳川慶喜がだいぶ評価を下げる描かれ方だったなぁ。朝敵にならないことが当時の価値観の全てで、天領つまり徳川直轄地の多摩石田村を故郷にしていた土方は徳川将軍家のために尽くすことが全てで、新選組はときには時代の大勢にあったけど、孝明天皇が崩御されてからは時代の流れに抗い続けた。司馬遼太郎は敗者を描いた小説も多くて、『燃えよ剣』だけではなく、河井継之助を主人公にした『峠』、江藤新平を主人公にした『歳月』も読み応えがあるので、燃えよ剣にハマった人には是非読んで欲しい。
