kuu

燃えよ剣のkuuのレビュー・感想・評価

燃えよ剣(2021年製作の映画)
3.8
『燃えよ剣』
映倫区分 G
製作年 2021年。上映時間 148分。

新選組副長・土方歳三の生涯を描き、過去に映画化、ドラマ化もされてきた司馬遼太郎の歴史小説を、『関ヶ原』の原田眞人監督&岡田准一主演の再タッグで新たに映画化。
土方歳三役の岡田のほか、土方と生涯愛を貫くお雪役を柴咲コウ、近藤勇役を鈴木亮平、沖田総司役を山田涼介、芹沢鴨役を伊藤英明がそれぞれ演じる。
山崎烝役をしてたウーマンラッシュアワー村本大輔が意外に熱演。

江戸時代末期。
黒船の来航により、外国から日本を守るため幕府の権力を回復させようとする佐幕派と、天皇を中心にした新政権を目指す討幕派の対立が深まりつつあった。
武州多摩の農家に生まれた土方歳三は
『武士になりたい』
という思いで、近藤勇、沖田総司ら同志とともに京都へ向かう。
芹沢鴨を局長に、徳川幕府の後ろ盾で新選組を結成し、土方は「鬼の副長」と恐れられながら、討幕派の制圧のため京都の町で活躍を見せるが。。。

沢山ある司馬遼太郎の歴史小説の中でも、群を抜いて人気の高い作品の実写化。
結構原作に忠実ちゃうかな。
あくまでも司馬史観上の歴史に、独自の足跡を残そうとする作品と云える。
江戸幕末の混乱と、散切り頭を叩き始めた明治維新につながる礎を、エンタメ感も残しつつ司馬史観に忠実に描かれてました。
今作品は、幕府の政権が崩壊しつつあるときに京都を守護(今で云うフーリガンから守る)する役割を果たした寄せ集めながら一時は幕臣まで登り詰めた集団、新撰組の副長、土方歳三の波乱に富んだ人生に焦点を当ててて(『て』のトリプル)、登場人物のほとんどは歴史上の実在の人物に基づいてます。
ただ、こないな人と、こないな人が剣を交えるのは有り得へんが、あったら楽しいレベルの場面もあったし、司馬遼太郎独自の見解(土方がお雪にボソッと『坂本龍馬は殺ってない』と云ったり)をドラマチックに描いてました。
マブのラストサムライ、ジュール・ブリュネ(榎本武揚率いる旧幕府軍に参加した。ハリウッド映画『ラスト サムライ』のモデルになった人物)を登場させているのは巧いなぁと膝を叩いた。
映画は間髪入れず、物事はかなり速く進み、ダブりは少なく、当時のパワーバランスに関する背景や説明は最小限にとどめられているし、時代背景を軽く知ってる方がより楽しめるんかなぁなんて思います。
(わかりやすい説明や台詞を述べるシーンはありましたが)
よく練習したであろう俳優たちと、よく撮られた殺陣があちこちにあり、新撰組間のパワーバランス、反逆、裏切りに関する政治的な話に満ちたてたし、歴史ファンは勿論のこと、権謀術数好きにも楽しめる作品かな。
今作品は、上記のフリークや、演じる役者推し以外も、歴史モノを見始めたいと思てる人に観てほしいなぁと。

四方山噺を徒然に。
近藤勇の名言
『俺は武士よりも武士らしい武士になる』ちゅう言葉がある。
そんな彼の武士(モノノフ)魂を象徴するってぇ云えば、
名刀『長曽祢虎徹』。
小生の愛刀(剣鉈)は越前『佐治武士』作(全く関係ないので🙇‍♂️)。
今作品でも近藤勇が虎徹を愛刀にし、
土方歳三は和泉守兼定(錆が回ったモノを廉価で手に入れ砥にだし、名刀に甦らせたと描かれてたが、刃物を砥いだことあればわかるようにサビサビの刃物はほぼ甦らせるのはムリ)、
沖田総司は菊一文字則宗。
その三本の差料の中で、今でも刀剣マニア内で論争になってんのが、近藤勇の佩刀の名刀虎徹。
それは実は、虎徹じゃなく源清麿やったんちゃうかと云う人も少なくない。
そのことは、清麿大鑑にも載ってて、でも清麿大鑑の作者がその話を否定できないと書いてるしよくわからない。
しかし、戦闘を職業にしてる新撰組にとって刀は実用品やし
名刀
= バリ斬れて、折れたり曲がったりしにくい刀
ちゅうことなら実際に斬ってみて、よく斬れれば、その人の中では名刀となるやろう。
名刀の中でも虎徹は斬れる刀の代名詞ってのは過言じゃないやろし、近藤の中では、
バリ斬れる
= 虎徹
となったんやないかな。
近年の刀剣の専門家たちからは、近藤勇の差料はやっぱり虎徹やったと肯定的にとられはしてる。
どっちやねん!!
真偽は近藤さんに聞いてみなきゃわからない。
とは云え、今作品でも描かれてる池田屋事件で、永倉新八はじめ、多くの隊士の刀は激闘に末に折れたそうやけど、近藤勇の長曽祢虎徹(近藤さんが云うところの)は、持ち主同様に無傷だったそうな。
(今作品では近藤はぼろぼろやったが)
実際には、池田屋事件の後、郷里の養父に宛てた手紙の中には、
『下拙刀は虎徹故に哉、無事に御座候』
と書き送ってて、他の隊士の刀はボロボロになったが、自分の刀は長曽祢虎徹だったので命が助かったということを述べてるし、虎徹でなかったとしてもスゴい業物には間違いない。
また、このコテツで思い出すのは、昭和、平成に京都に暮らした事がある人なら、名刀より指定暴力団(ヤクザ)会津小鉄会を思い浮かべる方が多いのかなと思います。
こちらは、創設者である上坂仙吉が好んで差していた虎徹の名前に因んで、周囲から小鐵(こてつ)と呼ばれてたそうで(上坂仙吉を讃える小説には会津候下賜の刀とされてた)、今作品と同時期に上坂仙吉は、会津藩守護職の鳶部屋総締役、現在で言う東京地検特捜部のようなもの(新撰組もおなじような感じ)に任命された後に、会津の小鉄と呼ばれるようになったそうな。
都市伝説的になってはいるが、近藤勇と同じく『虎徹』の名刀を愛用していたのが本当なら、
近藤勇、会津の小鉄、両人がほんまモンの虎徹を持ってたのなら、同時代におなじ場所に虎徹が存在してたレアケースになんのやなぁ泪。
また、文明開化に新撰組が非業の道を歩まなければ、現在には
『指定暴力団新撰組』てのが存在してたのかなぁなんて思うとヤクザは怖いがロマンがあるなぁ。
漫画『静かなるドン』の組は、
新鮮組でロマンがないけど。。。
kuu

kuu