どでん

窮鼠はチーズの夢を見るのどでんのレビュー・感想・評価

窮鼠はチーズの夢を見る(2020年製作の映画)
4.3
※自分自身がゲイではないことを前提として

成田凌
喋り方
目線の送り方
タバコ吸ってる姿
椅子に座ってる姿
何から何までイマガセに憑依しすぎてて実際に存在するんじゃないかってぐらい素晴らしすぎた
しかもそれが気持ち悪くないっていう

大倉忠義
元々の結婚相手に別れ話切り出された時の表情からのうわっあいつやっぱり浮気のこと嫁にチクりやがったなっていう表情からのぉおまじかそういうこと?っていう一連の表情が上手すぎ

全然関係ないけど途中大倉が亀梨和也と生間斗真と藤木直人に一瞬見えた


作品として

まず「窮鼠」の読み方一生覚えれないし書けないだろうなあ 

オオトモが元々の結婚相手と別れる時まさか嫁も、いや嫁が浮気してたっていう設定はさすが一枚上手

オオトモが元々の結婚相手から言われた「そうやっていっつも私が何か言うのを待ってる空気がもう気持ち悪いの」っていう言葉と
終盤会社の同僚の女性に言われた
「どうして黙るんですか 何か優しい言葉言わなきゃって考えてるの 別れるんだったら何かそれらしいことなんでも言えばいいじゃないですか」
っていう序盤とリンクしたような台詞
オオトモの人間性を他者からの言葉として言われることで上手く表してるなぁって思った
個人的にも何故か酷く心に響いた

「好きな人に呼ばれたらすぐに飛んで行くような男なんですよ俺は」
「大学の頃あなたのタバコになりたいと思ってたんだ、指先に挟まってるタバコが羨ましかったんです」って恥ずかしがることなくストレートに言えるイマガセの真っ直ぐさ、オオトモへの一途さ
そんなイマガセをオオトモは好きになったんだろうな


ポテチ食べるくだりは2人の距離感、関係性を上手く表してるなぁって思った
これ直前にいいよ入りなよっていって玄関のドア閉まってこりゃなんかあるぞって思わせといてのこの緩急のある演出

4人の食事の時4人全員がそれぞれを探ってる、勘ぐってるような描写あれ良かった

イマガセが椅子に座ってる姿は終盤間接的に上手く絡んでいて洒落てんなぁって思った

ナツキとイマガセが話し合う場面
ナツキがイマガセに対してオオトモとの関係をドブ呼ばわりする分からんでもない一般論
からのオオトモがイマガセと一緒のドリンク頼んじゃう2人の息の合った関係性 

オオトモとイマガセが別れる場面
「あなたじゃだめだ」 
「あなたにはおれじゃダメだし」
からの
「ずっと苦しかったろ」
の意味合いはこの時点で色んな感じ方があったが
その後の
「あまりにも相手を好きになりすぎると自分の形が保てなくなって壊れるんですよね」の台詞によって端的に答え合わせしてくれた
これもイマガセ本人の言葉じゃなく会社の同僚の女性の言葉っていう間接的なのがまた良き

オオトモがゲイバーに行って店から出てきた時泣いたのは何故か
この答え合わせはないが自分の見解としてはもしかしたらイマガセに会えるかもと期待してゲイバーに行ったが会えなくて悲しさから泣いたと思ったがここはよお分からん

最後椅子に座って風靡きながらのカーテンが"ダサい"青色じゃなくなってて白っていうのもなんだか喜望が持てるいい終わり方。

一方で一個前のシーンで海の場面があえてここで再登場し、イマガセが海に向かって「好きだったな」と過去形として叫んでることからももう2度とオオトモの前に現れないかもしれないという可能性も秘めている

オオトモは覚悟も決めて準備万端
要するに後はイマガセ次第なんだろうが
この辺りがフィクションだなって感じ
実際最後時系列をちょっとずらしたのはあんまり意味ないと思うしこのせいで若干こんがらがったし
だって別れ話して別れたのにまた抱いて一夜でまたオオトモの前から姿を消すんだから

オオトモとイマガセは終始お互いを名前で呼び合わなかったのは恐らく理由があるんだろうけどなんでかは考えたけど分からなかった

同性愛に対する社会的偏見を社会的問題として無理やり問題提起してる訳じゃないのも観てるこっちがしんどくなくて良かった。


結果
成田凌、大倉忠義の凄さ
作品としての完成度の高さ
どちらも兼ね備えてるこの映画は凄い
どでん

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