東京国際映画祭学生応援団

窮鼠はチーズの夢を見るの東京国際映画祭学生応援団のレビュー・感想・評価

窮鼠はチーズの夢を見る(2020年製作の映画)
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想像以上に生々しい映画で驚きました。でも、そんなことが気にはならないくらい、良質な恋愛映画でした。

男性同士の恋愛を扱ってはいますが、恋愛を一度でもしたことのある人なら誰でも共感できる作品です。

行定監督が撮る恋愛は生々しくて、心に刺さります。

特に成田凌さん演じる今ヶ瀬の表情は繊細で、壊れそうで、美しくて、本当に素敵な役者さんだと改めて気づかされました。

生まれ年のワインをもらった時の嬉しそうで苦しそうな今ヶ瀬の表情は、涙が出ました。

また「やらせてくれるんですか?」と言っている今ヶ瀬を家に入れた後、しばらくドアのカットが続いたシーンがとても好きです。中での会話が想像される余白でした。

人はみんな、今ヶ瀬か大伴先輩、どちらかなんじゃないか、と思いました。

大好きな人といると他に何もいらないくらいに幸せなのに、同じくらい苦しくてたまらない今ヶ瀬。自分を愛してくれる人が欲しくて、ずるい態度ばかり取る大伴先輩。

恋愛をしている時、人はみんなどちらかに当てはまる気がします。「大伴先輩みたいな人大っ嫌いなのに。」というセリフが印象的です。

人を好きになるのに、好みのタイプとか関係なく、ただその人だけが例外になってしまう感覚は全国民が共通に持っているのではないでしょうか。

恋愛が楽しい人も、恋愛に疲れた人も、ノンケでも、ノンケでなくても、どんな人にも見てもらいたい作品です。

《鑑賞者:みゆう》