白石ころ

窮鼠はチーズの夢を見るの白石ころのレビュー・感想・評価

窮鼠はチーズの夢を見る(2020年製作の映画)
4.2
原作のファンなので本当に公開を楽しみにしていた作品。ボーイズラブというくくりで偏見を持たないでほしい、切ない恋愛映画。

甘ったれ流され侍の恭一をひたすらに慕う陰湿粘着腹黒ゲイ今ヶ瀬の2人…本当にナイスキャスティングだし大倉くんも成田くんも体を張ってよく演じ切ってくれた!という感じ。

恭一みたいな男、現実にいたらマジでタチが悪いと思うんだけど、まあ〜こういう人もいるんだろうな〜と思わせる絶妙なリアルさよ…。彼自身は女性から向けられる感情に応えているだけで悪気はなく、むしろ誠実に対応しようと努力してるところが本当に最低。そして相手の女性達もきちんと魅力的なんだよなあ。

BLって女性向けのファンタジー恋愛が多いから、ノンケという設定でもゲイに迫られると大体コロッといって\たまたま同性だっただけであなたが運命の人!/みたいなお花畑エンドで終わるんだけど、この作品はそういうホンワカ感ゼロ。
むしろ全くもって2人は運命の人じゃないし、お互いそれに気づいてる。
それでもどうしようもなく惹かれてしまって手に入れようと苦しむ今ヶ瀬の行き過ぎた健気さに泣ける。
最初の恭一はいつも通り流されているだけだったのかもしれないけど、いつの間にか自分の意志で今ヶ瀬と一緒にいることを選んで、「愛情とはなにか」向き合い始める姿にじんとくる。

ポテチ食べてるシーンとか洗濯物干すシーンとか誕生日祝われてる時の幸せそうな今ヶ瀬がもう、、、もう、、、

漫画はめちゃめちゃセリフが多いけど、映画はかなり映像や空気感で表現されている印象。
その中でも「心底惚れるって、すべてにおいてその人が例外になっちゃうってことなんですよね」っていう今ヶ瀬のセリフと、「恋愛でじたばたもがくより、大切なことが人生にはいくらでもあるだろう」って恭一のセリフは沁みるなあ。

とにかく成田凌美しい。