あなぐらむ

すけばん刑事 ダーティ・マリーのあなぐらむのレビュー・感想・評価

3.6
これはまぁ干されるわ、という長谷部さんなりのロマンポルノ世相への意義申し立てであり、恣意的な警察権力への抗議が盛り込まれた一作。
皆さんタイトルでお分かりの元ネタの物語を換骨奪胎して、密会盗撮恐喝犯の陰湿な犯人像を作り上げ、その過程での犯罪成立の相対性(それを訴えたものから事件となる)を際立たせて、その中で女刑事マリーの孤立を梢ひとみが見事体現していく。

殆どあぶ刑事の鷹山刑事なままの女刑事マリーのキャラクター、相棒の河原崎次郎の二人は背も高くファッショナブルで、歩き姿も画になる。
山科ゆり、宮下順子が女性性の戯画化としての役割でちょい役出演。殆ど出オチの坂本長利が楽しい。渋谷を舞台にしていて、今はなき桜丘の高速下の歩道橋など懐かしいロケーションも見所。

一世一代の熱演を見せる犯人役・浜口竜哉が作品の不気味さを上げていく。この犯人造形は以降の長谷部さんのロマンポルノ男性のプロトタイプと言える。女を襲いながら恐れ、そして強い女によって葬られる。一方で相棒とは決して寝ないマリーに長谷部ハードボイルドを見る。

きっちり最後の銃撃戦対決へと引かれた脚本の動線は流石という感じ。何と言うか、アイテムゲット感が凄いのよ。
面白いのは、女である主人公マリーだけ本名がなく、役名から「マリー」な点。彼女は男性社会で孤独に戦う女性の承知なのだ。抜群のスタイルと長いロングヘア、粋なファッションにグラサンで決めた梢ひとみがクールネスで最高。

五條博、益富益孝に高橋明(ナカさん辺りの役)、庄司三郎さんも出てます。清水国雄、影山英俊も。近藤課長ほど理解無い定型な上司に長弘。この人も台詞多かったなぁ。

二年後に長谷部さんは「犯す!」を撮る事になる。

※公開時一般公開だったとの指摘がありましたので、当該箇所の記述を削除しました。ご容赦。