べえさあ

フォードvsフェラーリのべえさあのレビュー・感想・評価

フォードvsフェラーリ(2019年製作の映画)
4.2
“You can't buy a win, Lee, but you could buy the guy who gets you a shot. “
「勝利は金で買えない、だが勝利のチャンスを与えてくれる男は買える」

タイトルこそ「フォード vs “フェラーリ”」だが、最後まで観てみると、2人の男がフェラーリとのレースという名のフィールドで、どこまでもビジネス志向で官僚主義のフォード社の役員に立ち向かう話でもあった。

レース終盤でのフォードからの提案とその結果には呆れたし、こっちまで悔しくなった。でもあの決断を下した時点でケンには本質が見えていたんだと思う(実際どんな反応を見せたのかはわからないが)。とても感動した。

特に好きだったのは音で自分もレーシングカーに乗っているかのような気持ちになるくらい大迫力で、IMAXで観ればよかったと後悔、、!泣 上映時間が2時間半もあったということを観終わってから知り驚いた。スピーディな展開と細かい緊迫感のあるカットにより、長さを全く感じなかった。

車の設計・パーツについての説明や描写はレース上の戦いと2人の友情に重きを置くためにあえて簡略化されているのだと推測するが、詳しく解説されたとしてもそこらへんの内容は知識が無さすぎて全く理解できなかったと思う、、。😅

クリスチャン・ベール、大好きな俳優。どんな役でもやってのける演技力と映画のために行う肉体改造(今回は7ヶ月で30キロ減)からはいつもプロフェッショナリズムを感じさせられる。尊敬でしかない。
マット・デイモンはいつも通りのマット・デイモンでそれが好き。

実話ベースの作品は、作る前に話のどこに着目するかでストーリーやメッセージが変わるため、取捨選択が難しいのだろうなと思った。実話なのだからフィクションの世界のように都合よくはなくて、実際にはもっと複雑な状況や問題が裏で起こっていたに違いない。現に設計面での苦悩についてはそこまで描かれていないし、主要人物であるシェルビーの私生活についても全く触れられていない。それは今回男の友情、富と名声、個人と社会等をテーマにしたからで、GT40のメカニック面を重視したならば、またがらりと違った作品になっていただろう。ハリウッド映画的にどこまで作品の世界観を崩さずに、映画としてのストーリーの形成に必要な事実だけを盛り込んでいくのかということなのだろう。