ミレニアムや特捜部Q、刑事ヴァランダーなどに次ぐシリーズとして人気の北欧ミステリー。スウェーデンのアガサクリスティと云われる女流作家カミラレックバリの小説で、過去にも映画化、テレビドラマ化されており、母国スウェーデンによる本格的な初映画化として期待が高まったけれどあまりヒットしていないしフィルマのスコアも低い模様。
序盤から、育ての祖母?から疎ましく思われてるような重苦しいシーン。両親とは既に死別している作家のエリカ、夫は優秀な警察官パトリック。この2人が主人公なのだけれど、エリカにいきなり実の兄と名乗る男が現れたかと思うとすぐに死んでしまい、え、何なん?てなる。
10作まで出ている原作の第5作を映画化という前情報だけ入っていたので、うーむ、これは原作読んでる前提なのか?それともこういう行き当たりばったり的なストーリーなのか?と困惑しながら観ていくことに。
亡くなった母の手記から第二次大戦中の友人たちのことを知り、ひとりひとりを尋ねることで母の知られざる過去へと近づいていくというプロット、ところが出会う人が次々と死んでいく。
浮かび上がるのはナチスの影、強制収容所での忌まわしい出来事。
スウェーデンは中立国なのでドイツに蹂躙されたノルウェーやデンマーク、ロシアに屈したフィンランドに比べ、悲惨な戦争体験を題材にした映画は極端に少ない。
ここではノルウェー人ながらドイツに加担した男をキーマンに据え、戦時下においてごく普通の出会いや暮らしをすることの叶わなかった人たちの悲劇を描いている。
登場人物が多いためかあまり深掘りされることなく人が死んでいきかなりとっ散らかった印象で、ミステリーとしても警察ものとしてもちょっと中途半端な感じは否めない。
しかしこの乾いた空気に包まれた灰色ベースな色彩と人物描写はスウェーデンならではの雰囲気。ラストに向けて緩やかに重みを増していく哀しみはズーンと心に響いて鑑賞後の満足度は高かった。
もう少し丁寧にシリーズ化してくれたらきっと面白いのだろう。リブートが期待される逸材だと思う。ただし、ハリウッド向けではないかな。