しおまめ

DUNE/デューン 砂の惑星のしおまめのレビュー・感想・評価

DUNE/デューン 砂の惑星(2020年製作の映画)
3.7
噂に聞く古典。
SF超大作として数々の作品がその特異なビジュアルに影響を与えたとして名高い作品を「メッセージ」のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が映像化。
約3時間という長尺でありながら物語はまだまだ続く。これは下手するとスターウォーズレベルの大河作品になりうる。


スターウォーズと書いたが、あながち遠からず。
我々が考えるような未来世界と違い、中世の技術力も垣間見える、極めて中途半端な世界観なのはスターウォーズも同様。
原作が成立した時代を考えれば致し方ないし、そもそもスターウォーズがポストDUNEとも言える。
ただ比べてみて面白かったのは、銃器がたくさん登場するスターウォーズと違って、DUNEは銃らしい銃が存在せず、
代わりに近接武器による斬り込みが主流となっている。
そのため戦闘シーンはまるで騎士達の闘いとしてある種の神聖なものにも見えた。
(それは背景美術もあいまって)
あまつさえ世界観が世界観だけに、その宗教的思想や政治劇、陰謀といったものが今日まで続いている現実の中東の混乱とダブる。
原作が成立した時代背景が知りたくなった。


原作はおろか、過去の映像化も未履修だった自分にとって、物語における用語(特に人名)の嵐は苦痛だったが、
メインとなるポールの予知夢の正誤や政治劇等はちゃんと理解できるようになってたし、なにより描写が非常に緻密。
そして噂に聞いていたナウシカやラピュタの宮崎駿監督作品との類似点が非常に目についた。
終止「宮崎監督はここから引っ張ってきたのか!」という発見があって面白かったし、もしかしたら今回の映像化にいたり、逆にヴィルヌーブ監督が寄せていったかもしれない。


お話自体は面白いのは確かなんだが、いかんせん3時間もかけたわりには物語はあまり進んでおらず、
長大なプロローグといった形。
その長さに耐えうるものが用意されているかと言うと・・・あまり目立たず。
前監督作や前々監督作の「2049」や「メッセージ」は主に人型によるアクションがメインだったことに対して、今回は比較的巨大なものが飛び交うメカアクションが多い。
しかし巨大さを醸し出すような演出があまりなく、メインメカとも言うべき“羽ばたき機”の特異なビジュアルに対して、その動きはほとんど現実世界におけるヘリコプターと同じ。
しかも特異なビジュアルなのは羽根ぐらいで、本体部分はヘリと言ってもいいぐらいに見飽きたデザインになっている。
(悪く言えばローターにある羽根を横っ腹にくっつけただけにも)
加えてこの作品のなによりのメイン、砂虫ことサンドワームについても、
縄張りに入ったからサンドワームに襲われないように震動を抑える歩き方をするほどに神経質なシーンのはずなのに、
次の瞬間には鞄を砂の上にドサッと下ろす。
今この瞬間が危険な状態なのかどうかを忘れさせるような描写にガッカリした。

正直、お話は面白かったが3時間もかけるほどのものなのかは疑問なうえ、
SF描写に関してはガッカリするほどに面白味がなかったので、余計に3時間という上映時間が重荷になった。
ハンスジマーの音楽も、ちょっとやり過ぎなぐらい五月蝿くかんじることもあったので、なんだかモヤモヤした気分で劇場を後にした。

俳優やキャラクターたちは個性豊かで良かった
(ダンカンかっこいい!)
しおまめ

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