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DUNE/デューン 砂の惑星のmegurosのレビュー・感想・評価

DUNE/デューン 砂の惑星(2020年製作の映画)
4.8
ストーリーはリンチ版からさほどの改変はなかったはずだが、今作の視点になるほどと唸った。

リンチ版はホドロフスキーのプロジェクトを引きずってか、あるいはLSDによってベトナム反戦意識が高まったという原作が書かれた時代背景がより近くにあったからなのか、“スパイス=麻薬”によって目覚めのビジョンが得られるというストーリーだった。しかし今作では、現在と未来、夢と現実は1つであるという「メッセージ(アライバル)」でドゥニ自身が描いたテーマがより強く押し出されていて、ドゥニが本作のリブートを熱望してきた理由がようやくわかった。

美術衣装•撮影•役者陣•音楽•VFX•演出の高度なアンサンブルによって惑星生活が克明に描かれていて、空間、建物、部屋の装飾、道具、兵器、衣装のデザインどれもが練りに練られている。そこに静謐な気品が漂っているだけでなく我々の見知った文明とは異なる意匠が凝らされ、オーニソプターの羽が畳まれた停止時の姿、ハルコンネン来襲時の爆発表現、バリアを押し破る特殊ミサイルや、空高く分裂しながら落ちてくるミサイル等、ビジュアルイメージの奔流に浸れるからこそ大画面の劇場で観ておく価値がある。

※IMAXカメラで撮られている作品のため、1.43:1対応シアター(池袋or万博記念公園)を強く推奨。それでだいぶ印象違うと思います。

※帝国視察メンバーのローブやヘルメット、アラキス到着時のジェシカたちのベール及び装飾品、浮遊する照明ドローンも素晴らしかった。

また、リンチ版で多用されていた”内心の声”を減らすための工夫にも感心した。例えばポールがベネ•ゲセリットの教母(シャーロット•ランプリングがまた素晴らしい)からテストを受けるシーン。リンチ版では恐怖を通過させるという話をポール自身が内心唱えていたが、今作では部屋の外で無事を祈るジェシカの魔術的な声として言い訳が立つようになっていただけでなく、ポールがキッと教母を睨みつける演出に変更されたことでポール自身が特別な存在であることがうまく表現されていた。ジェシカのハンドサインにしても前作はなかったはずだが(原作にはあるのか?)、口を封じられている時に意思疎通を図る手段としてオーソニプター内でのボイス活用場面でうまく取り入れられていた。

また、各勢力における役者陣の並びもいい。オスカー•アイザック、ジョシュ•ブローリン、レベッカ•ファーガソン、ジェイソン•モモア、シャラメのアトレイデス家。ステラン•スカルスガルド(天井張り付きが良かった。このシーンは前作より特に良かった部分)、デヴィッド•ダストマルチャン、デイヴ•バチスタのハルコンネン家。フレメンにはハビエル•バルデム(自分の貴重な水分を出すということで、唾を吐くことが敬意を示すことだというシーンがドハマり) までいる。

音楽のハンス•ジマーも良かった。何かドーンドーンと一本調子で少し飽きてきたよね...と思って期待していなかったのだが、民族的なチャントが巧みに使われていて新境地を聴いた印象。パート2ではまた新たに90分くらい書いてるらしい。スケールの大きい音を書かせたらこの人をおいていないのだと改めて認識。

パート2でいえば、いよいよ皇帝が出てくるはずだが、リンチ版では宇宙を統べる程の凄さ/怖さが少し弱かった。ホドロフスキーはサルバドール・ダリのキャスティングを予定していた役柄だが、ハルコンネン家が既にかなり恐ろしい上、サノスことジョシュ・ブローリン、シュガーことハビエル・バルデムまでいて、それを超える怖い人に誰をキャスティングするのだろう。

*予想の記事を読んだら、マハーシャラ•アリ、ブライアン•クランストンの名前が上がっていた。無理だと思うが、アル•パチーノとかどうだろう...。デンゼル•ワシントンとかもいい気がするし、クリスチャン•ベールとかで狂った感じを出しても良さそう...。
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