空海花

DUNE/デューン 砂の惑星の空海花のレビュー・感想・評価

DUNE/デューン 砂の惑星(2020年製作の映画)
5.0
映画界では曰くつきとなってしまった
フランク・ハーバートのSF小説『デューン』
原作ファン、デヴィッド・リンチ版も大好きで、ドゥニ・ヴィルヌーヴファンである私に心配は欠片もなかった。
感想から述べると大成功の大満足。

10,190年、銀河系は分裂し、
人類が地球以外の惑星に移住して宇宙帝国を築いた世界。
1つの惑星を1つの大領家が治める厳格な身分制度が敷かれていた。
主人公はレト・アトレイデス公爵の息子ポール。
一人の若者が自らの宿命を知り、運命を切り拓く─

元の原作の難解さに加えヴィルヌーヴ監督作ということで、更に難しくなるかとの懸念はあったが、
想像以上にわかりやすい、まさに原作を教科書にした作り。
オープニングに“part one”と出るので、ミスリードもない。

不意をつかれたのはティモシー・シャラメのカリスマ性はこれほどまでか、ということ。
あの美貌の奥に潜む、強さや輝き、ともすれば狂気。
十二分にその才能を引き出した。
脇を固めるキャスティングもすばらしく、両親にはオスカー・アイザックとレベッカ・ファーガソン。
その表情や出で立ちは原作を彷彿とさせた。
腹心にジェイソン・モモアとジョシュ・ブローリン、またpart twoにも期待したいハビエル・バルデム。
ヒーロー物に出演歴がある俳優が多いが、モモアはダンカンだし、ジョシュ・ブローリンはポールの師そのもの。当然アクアマンさもMCU感もない。
そういうの感じてしまうのが私は結構嫌なので、やっぱりちゃんと消すことはできるんだなと確信した。
といいつつポルカドットマン(スースク)のデヴィッド・ダストマルチャンが居たのには少し笑ってしまったけれど。
フレメンのヒロイン ゼンデイヤの出演時間は僅か7分。サブリミナルのような夢の演出。美しいカット。
次作はメインとなるはずなので、ファンの方はpart twoこそお楽しみに、かな。
むしろ物足りなさを感じたのはシャーロット・ランプリングの出演時間。
リンチ版だともっと多かったはず。
ヴェールの奥の眼力には感服。
リンチ版からやはり気になるハルコンネン男爵、ステラン・スカルスガルドにやらせておけば間違いない(笑)
サンドアームとも気持ち悪い造形にニヤリ。
天井のあれ、良かった。

SFでありながら、生の自然での撮影にこだわっただけある超美麗な映像美。
ドゥニ・ヴィルヌーヴといえばやはりこの詩的映像美。
過酷な砂漠の撮影が演技にも相乗効果を生み出す。
薄暗さの続く夜の襲撃や夜明け前の逃走場面などもきめ細かく美しくて嬉しかった。
衣装もレトロで近未来かつソリッド。
牛やねずみのモチーフなどを見つけるのも楽しい。
昆虫のような航空機「オーニソプター」
やはり虫のような暗殺兵器「ハンターシーカー」などのテクノロジーもワクワクしながら見た。

またその世界観を表現するのにハンス・ジマーの音楽は欠かせない。
彼もまた原作の熱烈なファン。
気合十分な、異世界の音楽。音の造形。
まさに“浴びる”という言葉が相応しい。

話はそこまで進まないものの、ラストシーンにあれに乗る高揚感をきっちり入れてくる演出もあり、
ここで終わり?という印象も私にはあまりなく順当だったかなと。
わかりやすい、といったものの、
今回スパイスについてはあまり触れていない。
異質な煌めきを持つ不思議な質感の香料、メランジ。
これも次回に持ち越されるのだろう。
1965年の小説ということで古臭さを感じる人もいるかもしれない。
だが、環境破壊や企業の搾取、先住民問題など現代への社会問題と通じるところもある。

本作は感性で全身に浴びるだけでも価値はあると思うが
元は壮大なスペースオペラ。
構造は理解しておいたほうがより楽しめるとは思う。
私が読んでいたのは旧訳版で
1番新しいバージョンは本作の写真が表紙(つまりティミーが表紙😍笑)なので新訳版も読んでみようかと思う。

直接的ではないとはいえ感覚的に、リンチ版へのリスペクトもあるように思うのも嬉しい。(気のせい?笑)

『スター・ウォーズ』や『風の谷のナウシカ』など、多くの人に影響を与えた『デューン』
映画好きならぜひ映画館でこの映画を浴びてほしい。
私は普通のIMAXレーザーですが…φ(.. )笑


2021レビュー#179
2021鑑賞No.401/劇場鑑賞#79


観ている間も鑑賞後もその後の余韻も
⭐5です!😆
空海花

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