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DUNE/デューン 砂の惑星のNMのネタバレレビュー・内容・結末

DUNE/デューン 砂の惑星(2020年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

難解だったと言うのは悔しいが、正直そうだった。分かったふりもできない。
特に前半は何度も何度も繰り返しながら観た(字幕版で観たせいもあるかも)。だがそのシーンを繰り返し見ても意味はなかった。よく聞けば分かるような作りではない。謎のワードが出てきて、しかも複数の意味で使われていたりして、それが何を指すのかは観ているうちに自分で推測する仕組み。
何度も映画化されているらしいが、それほどに魅力あるタイトルなのも納得。ホドロフスキー版も気になるがもっとわけが分からないだろうと予想。
そして終わりは、これからというときにすっぱり切られる。次作があって良かったと心から思った。といってもこの終わり方も好み。
これはこうで実はこれで最後なんとこうなりました、という分かりやすい起承転結がほしい人にはきっと好かれない映画。わからなさを楽しめるかどうか。
早くパート2を観たいが少し休憩したくもある。
ティモシーは、暖炉の前で泣いていたデビュー当時しか知らないので、こんなに逞しくなって、と感慨深かった。鑑賞後たまたま当時のビジュアルを見たら本作と体つきが全く違うことに気づいた。観ていても、武術に長けるわりには細身だなという印象を持っていたので、こんなに変わっていたとは驚き。いつからかは知らないがきっと本作前にもそれなりに体作りをしたのだろう。ポールは強い設定。役柄も、重大な運命を背負っているので自分でも選択し切り開いていく役割。まだ何も知らない子どもと思ったら案外しっかりしていて良かった。
お父さんの結果残念。そして裸にされてもむしろかっこいいのがすごい。息子とジェシカのことはすごく大事なんだろうけどそれをあからさまには表現しないころがかえって魅力。ダンカンとかカインズ博士とか、やはり良い人には生き残って欲しいもの。
カインズの死に様は素敵だった。自分が何者か、何を信じているのか宣言できるものがある。大抵の人は最期に一言どうぞと言われても咄嗟には出ないだろう。
ダンカンもカインズも一見ほんの時間稼ぎをしただけに見えて、きっと大きな運命の後押しになったのだろうなと思うと、意味のある死を迎えるロマンを感じた。
現代のカメラは性能が良すぎて映像が綺麗になりすぎるので、本作ではわざと汚す作業をしてあると聞いたことがある。映像美に見とれるのではなく内容をみせる作品なのだろう。


あらすじメモ
(字幕版の。吹替版では用語などが異なっていたので印象が異なると思われる)
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高度に科学と秘術が発展した、宇宙のどこか。

アトレイデス公爵家は、領地である惑星カラダンを代々治める。
彼らはコリノ家バーディシャー皇帝率いる「帝国」の傘下にある。
着実に勢いを増してきており、他の領主たちから期待も寄せられている存在。

皇帝からアトレイデス家に、惑星アラキスの管理を命じる勅命が下された。
帝国から使者たちが来て調印式が行われる。
先立って担当者3名を往復させたときの交通費だけでかなりのものだった。
対して今回、帝国の使者は巨大な船で大勢を連れ立ってきている。力の差は歴然。

アラキスは砂漠と岩山に覆われた灼熱の星で、この世界の宇宙航海に絶対に欠かせないスパイスの産地。
この厳しい自然に対応してきたのは、鮮やかな青い目を持つフレメンと呼ばれる先住民たち。

それまでアラキスは、ハルコンネン男爵家が80年もの間管理し、スパイスで莫大な富を築き皇帝にも匹敵する勢力となっていた。
ハルコンネン家は、勢いのあるアトレイデスが目障りで仕方ない。

アトレイデス公爵レトの一人息子、ポール。その母ジェシカとレトは正式な婚姻関係にないが同等の地位はある。
ポールはまだ若く当主の座に興味はないが、投げ出す選択肢などありえない。
レトは先代を事故で失くしていることもあり、ポールをとても大事に思っている。

ポールの武術師匠であるダンカンが、先遣隊としてアラキスに行くことに。
危険な任務。ダンカンは兄のように慕う存在であり、彼の身が心配。

というのもポールはよく夢を見る。
そのことは他人にはあまり話さないが、時々現実になる。
そして昨晩も、ダンカンがフレメンたちとともに死ぬ夢を見た。

ポールは、一緒に行ったら助けられるかもと考える。レトに頼んでみたが許されず、自分たちの便に同行するよう諭された。
フレメンも砂漠も危険だが何より政治上の危険が伴っている。レトは今回の勅命を皇帝の信頼を得た結果などとはとらえていない。嫉妬深い皇帝のこと、ハルコンネン家とアトレイデス家を争わせることで両家ともに失脚させるのが狙いだとふんでいる。もちろんハルコンネンのときより生産量が減ったり、その前に他の策略があればどうなるかは分からない。
しかしそれをチャンスに変えるしかない。
レトには考えがあった。ハルコンネンと同じやり方では彼らを上回ることはできない。脅威の一つであるフレメンたちを仲間にしたい。ダンカンたちはその重要な任務を託されている。
後任のガーニイは父の右腕であり、性格はかなり武闘派。だがポールも、訓練で彼と互角に持ちこむ程には強い。

ポールは母ジェシカから習ってベネ・ゲセリットという、特殊な声で相手を操る秘術も練習中。
その腕はまだまだ未熟。グラスを持ってこさせる命令すらできない。

ある嵐の夜。
緊張した面持ちの母ジェシカに起こされ、すぐに身支度するよう言われる。
そこにはベネ・ゲセリット学院の元学院長が、ポールの夢見について聞きにきていた。
ジェシカはその教え子。
そのシスターは現在は皇帝専属「読真師」という立場で、修道院長でもある。その結社はかなりの地位と影響力を持つ。
シスターとは呼ばれているが何かしらの神を崇めているような様子はなく、隠された教えを遂行するための集団。

ポールがシスターの待つ部屋に向かう途中、公爵家専属のユエ医師から簡単なメディカルチェックを受ける。
ユエ医師は密かに、ベネ・ゲセリットたちが隠している大義には用心するようにとポールに伝えた。

部屋に入るとシスターは即座に、痛みに耐える試練をその場で課した。
手には強力な毒針を持ち、耐えられなければ死ぬ。母は部屋の外で震えながら祈っている。
シスターはベネ・ゲセリットを自在に操るので抗いようがない。ポールは事態も飲み込めぬままとにかく必死でそれに耐えた。
それが終わると夢見について質問され、あるフレメンの少女の夢を見ると答えた。

ポール抜きでジェシカとシスターが話している。
本来男性には資質は継がせない、お前には娘を生むよう命じたのに傲慢にもクウィサッツ・ハデラックを生めると信じた、ポールは母ジェシカから強大な力を継いでいるが、仮に望まれし者であっても未熟なままでは悲惨な結果が待っている、とシスターは語る。
そして、アラキスでの下準備はできている、と伝え帰っていった。

見送りを終え一人になったジェシカは泣きそうなのを堪えている。
そこへこっそりその会話を聞いていたポールが現れ、どういうことか問いただされる。
ベネ・ゲセリットはこれまで大領主に仕えながらも、数千年にわたって血統を操作し、未来を導く強靭な精神の持ち主を求めているのだと話した。ポールは自分がその人物である可能性を知る。

ダンカンたちが出立した数週間後、本隊のレト公爵とポール、ジェシカたちもアラキスへ。
見渡す限り茶色い砂と岩山。昼頃は気温50℃を超えそのままでは屋外で活動できない。

部隊は砂地を越え、居城でありスパイス精製所のある都市街に着いた。
フレメンたちはベネ・ゲセリットの工作で抵抗を抑えられているという。
使用人のなかにはフレメンも少なくない。

ジェシカは、並んだ使用人候補の中に、一人のフレメンの老婆が胸に短刀を隠し持っているのを見抜いた。フレメンたちはクリスナイフと呼ばれる短刀を神聖なものとして携帯しているらしい。
私を狙ってもムダよと言うと彼女は、これは贈り物ですよ、もしリサーン・アル=ガイブ「母と息子」があなたなら予言成就の瞬間に立ち会える、と感極まりながらナイフを渡した。
ジェシカは彼女を採用。
部屋の扉に立っている兵士も老婆の仲間で、ハンドサインで意思疎通していた。

ポールが一人で私室にいると、壁の穴から虫型のロボットが入ってきた。
素早く握りつぶすと煙を上げ動かなくなった。近くに操手がいるということを意味する。
父はすぐにスパイを探し出すよう命じる。

ハルコンネン家。
ここにも皇帝のメッセージを持ってシスターが来ていた。
皇帝は極秘裏にハルコンネン家に力を貸すとのこと。
そしてシスターは、妻と息子については我々ベネ・ゲセリットが守るべき者だから手を出さぬよう言う。
ハルコンネン男爵は約束。しかし本心では皆殺しにするつもり。

ポールはダンカンと嬉しい再会。
ダンカンは一時はフレメンたちに襲われたが、隠れ家で共に生活することに成功していた。ここには無数の地下洞窟があり、数百万のフレメンが暮らしていると報告。
そして彼らのリーダーを連れてきていた。
スティルガーというその男はつかつかと反抗的態度で入室してきたが、公爵やダンカンたちを見て、フレメンの住処を探そうとするなという約束だけ交わすと、採掘については譲歩した様子。
去り際、ポールを見て「お前を知ってる」とつぶやいた。

帝国の生態学者カインズが、フレメン特製スーツを用意してくれた。これで日中も屋外で活動できる。
着方にコツの要る特殊なスーツのはずだが、なぜかポールだけはきちんと着用できていることにカインズは気づいた。

カインズの目は青かった。フレメンかどうか聞くと肯定も否定もしない。青い目はスパイスにさらされ続けたためとされており、目だけで断定することはできない。

案内するカインズと、公爵、ポール、ガーニイで採掘の視察へ。
すると目の前で事故が起こり、今にもスパイス採掘機とそこにいる人々ががサンドワームに襲われるという事態。
公爵たちは小型機だったが、せめて数人だけでも救おうと現場へ向かう。
ポールが避難誘導に加わるため地面に降り立つと、不思議な声が聴こえ呆然として座り込んでしまった。
すんでのところでポールが乗船していないことにガーニイが気づき助け出す。
直後、巨大な採掘機はさらに巨大なサンドワームに丸呑みにされた。

公爵はポールの行動を叱りつつ、正常に作動しなかった採掘機をハルコンネンの罠だと、帝国の担当者であるカインズ博士に詰め寄る。
しかしカインズは公爵の剣幕に慌てもせずまっすぐ目を見て、圧制者たちの小競り合いは私に関係ないと答え帰っていった。

ポールは私室でユエ医師の診察を受ける。スパイスの興奮作用でしょう、と判断して退室。
ポールは同室で見守っていたジェシカに話す。幻覚なんかじゃない、自分を呼ぶ声と夢に出るあの少女を見た、そして誰かが手渡したナイフで自分が刺されたと語る。
続けて母が妊娠初期であることも言い当てた。まだ誰も知るはずがないこと。
部屋を出てすすり泣くジェシカ。可能性は今やほぼ確信に変わり、不安でいっぱい。

ジェシカはポールについて、寝室で公爵に会話を切り出すが、聞きたくない、あの修道女と会って以来ポールに落ち着きがなくなった、と断られる。
君は「ベネ・ゲセリットとして」息子を守ってくれるのか、と立場を問われるが、ジェシカは答えなかった。

みな寝静まった深夜。
その晩睡眠薬を飲まなかった公爵は異変を感じて目覚めた。寝室を出ると廊下に人が倒れており、衛兵も通信に応答しない。
倒れていたのはあのフレメンの使用人だった。胸を刺されており致命傷。
彼女を起こそうとすると背中に矢が飛んできてアーマーを貫き、硬直して倒れた。

ユエ医師が居城の防衛シールドが解除されていることをガーニイに知らせ、兵たちが全員出動。
無数の小型機が次々と降り立ち、激しい地上戦となる。
皇帝親衛隊サーダカーとハルコンネン家だった。
ハルコンネン男爵の甥ラッバーンが先陣を切っている。

ユエ医師は倒れていた公爵を抱き起こし、詫びる。
妻を人質に取られ、ハルコンネン男爵にあなたを引き渡す取引きをしたと。
そして、ポールは守りますと語り、公爵が着けていた領主の印章指輪を外した。
さらに公爵に、男爵を殺してほしい、巻き添えにして自決できるようにと公爵の歯の中にそのための毒を仕込んだ。
動けず黙って聞いている公爵。

ハルコンネンたちはアトレイデス軍を押し切り、居城内に侵入。
ラッバーンはポールとジェシカをさらった。
小型機にはラッバーンの他に部下二人だけ。シスターとの約束を破り、秘密裏に二人を砂漠へ突き落とすつもり。
だが隙を見てジェシカがベネ・ゲセリットで全員を始末。
砂漠に着陸して振り返ると、居城は火の海だった。

公爵が目を覚ますとハルコンネン男爵たちの部屋にいた。
ユエ医師は男爵に殺された。彼の妻も。
男爵は公爵に、ポールとジェシカは死んだと告げる。公爵の目から涙が落ちる。
そして近寄ってきた男爵に、公爵は命と引き換えに毒を浴びせた。咄嗟に部屋の扉が締め切られる。

ポールたちが小型機を漁っていると、名前のない小さなメモとともにライトや小型の掘削機、そして父の印章指輪を見つけた。
公爵の死を悟る二人。
ポールは、夢に見たあの戦争が起こると恐れ混乱した。思わず母に、あなたのせいだ、ベネ・ゲセリットが僕を化け物にした、と叫ぶ。
朝になり二人が砂漠を歩きだすと、ダンカンが駆けつけた。そして領主たる指輪をしたポールを見て膝まづく。
ダンカンの乗ってきた小型機には、私に関係ないと語っていたカインズ博士も同乗していた。
近くにあるフレメンたちの隠れ家へ連れて行く。元帝国軍の基地。

ポールはカインズに、この裏切りの証言をしてくれないか問う。
彼女は、圧制者の争いに感知しない立場。その証言をみなが信じれば皇帝と諸大領主たちの戦争が起こるだろうと断る。
するとポールはカインズの過去や現状を言い当ててみせ、僕がもし予言の人物リサーン・アル=ガイブだったらどうだと聞く。

隠れ家の外に皇帝軍サーダカーたちが来た。
ダンカンは扉をロックして一人飛び出していった。
ポールが心配していた夢はまた一つ現実になってしまった。

カインズは二人乗りの小型機にポールとジェシカを乗せ、南にいるフレメンに助けを求めるよう言い、自分は走り出していく。それまでぼかしていたが初めて、私はフレメンだから大丈夫と宣言した。
そしてカインズは皇帝軍の追っ手に刺されたが、彼らを巻き添えにして砂に沈んでいった。
ポールは小型機を運転中、その幻視を見て彼女の死を知った。

ハルコンネン家。
公爵家は全員死んだと言うラッバーンの報告を、治療中である男爵が聞いている。
では密かに溜めておいたスパイスの販売を開始しろ、と指示。

ポールたちの小型機は不時着。ここから歩くしかない。
危険なエリアを身重でもある母を連れて必死で進み、ついにフレメンたちのもとへ着いた。
フレメンたちは貴重な水分だとみな二人に襲いかかったが、ジェシカがベネ・ゲセリットでそこにいたスティルガーにナイフを突きつけた。
スティルガーは、彼がリサーン・アル=ガイブかもしれないからと、とりあえず殺さないようみなに進言してくれた。
そして夢に見てきたあの少女もいる。チャニという名らしい。

しかし一人の荒々しいフレメンが二人を生かすことに反対。
ここでは最強の者がリーダーという決まり。スティルガーがジェシカに負けたのだから、リーダーの座をかけてジェシカの代理闘士と決闘させろと言う。
ポールが進み出た。
チャニがクリスナイフを手渡してくれた。当然ポールが死ぬと思っているようだ。
自分が渡されたナイフで刺される夢を見ているので死も覚悟している。それに、クウィサッツ・ハデラックが顕現するためにはポール・アトレイデスは死ななければならない、という声も聞いた。

決闘のとき。
なんとポールが圧倒的に強い。降参を迫るが、どちらかが死ぬまでやるのがルールだといわれ、とどめをさした。
フレメンたちはこれで仲間だと認めてくれたが、ポールの心は静かだった。

今度だけは夢は現実にならなかった。
ポールはフレメンたちとともに歩みだす。
今、ついに伝説が実現するとき。
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