タイレンジャー

グレース・オブ・ゴッド 告発の時のタイレンジャーのレビュー・感想・評価

3.5
20年間で80人もの少年に性的虐待をしていたことでフランスを震撼させた「プレナ神父事件」の映画化作品です。

本作で主にスポットライトが当たる3人の犠牲者はその後の人生も三者三様であるのが興味深いのと同時に、中でもエマニュエルの不遇っぷりはより一層際立つものがあります。もっと端的に言えば「人生を奪われた」という負のオーラが出まくっているのですよ、この人は。

エマニュエルの場合は精神的な後遺症だけでなく、肉体にもそれが及んでいて、男性器が変形してしまっているほど(その写真を見た女性弁護士が思わず絶句する)。

彼の苦痛はこちらの理解が及ばぬレベルのものかと思いますが、僕は徐々にエマニュエルに対して感情移入をしていきました。程度の差はあれど、「過去の傷」が足かせになって前に進めない時がある、という点では誰しもが共感しうるからです。

いい意味で「通俗的」な映画を撮るフランソワ・オゾンが本作においては珍しく抑制の効いた演出を見せており、堅実な映画である一方、若干の物足りなさも残しています。