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グレース・オブ・ゴッド 告発の時のmegurosのネタバレレビュー・内容・結末

4.3

このレビューはネタバレを含みます

フランソワ・オゾン監督。教会における神父による性的虐待を扱ったフランス版「スポットライト」とも言えるが、本作では真実自体は暴く必要がなく、証拠集めに苦労するわけでもなく、開始15分くらいで告発されたプレナ神父自らが罪をあっさりと認めてしまう。

では、残りの2時間何を描くかといえば、本人が幾ら罪を認めようともその罪を裁かず、口では対処すると言いながら全く動かず、騒ぎが大きくなると会見など開いて反省の素振りは見せるものの、本質的には変化や浄化の一切を拒む教会システムをこそ描く。教会の話ではあるものの、メールを送れど返信が来ない、打合せの設定をお願いするも1ヶ月後などを指定される等の具体的な描写は、日本の大企業ではままあることのようにも思われ薄ら寒い気持ちがした。

映画は最初に告発をした銀行員のアレクサンドルの話から始まるが、告発の波がフランス各地に広がり、それぞれの告発者の葛藤に焦点を当てた群像劇にもなっていく。巨大な権力、支配層に立ち向かうには連帯が欠かせないのは勿論で、その運動が潰されないように少しづつ活動の輪を広げながら着実にことを進めていくのだが、この映画が恐ろしいのは、連帯の先に迎える意見の食い違いや運動の瓦解をも描いている点だ。教会が腐敗しているからといって信仰を捨てるべきなのかどうか?ラストにアレクサンドルは「今も神を信じるのか?」と息子に問われるが、この問いはそれぞれが生涯信じ、生きてきた価値観に敷衍してもいいのかもしれない。今でも会社を、日本を、あの人を、信じるのか?

久しくオゾンを離れていたが、やはり力のある監督だと感じた。観ていなかった他の作品も少しづつ追っていきたい。
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