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家にはいたけれどのgenarowlandsのレビュー・感想・評価

家にはいたけれど(2019年製作の映画)
3.7
初めてのアンゲラ・シャーネレク。不思議な作風だった。言葉少ないストーリーの合間に、学校で生徒たちが演じる「ハムレット」が差し込まれている。教室から抜け出したハムレットは街に現れる。その意味もよくわからなかったが、メインストーリーであろう女性の孤独がキリキリと伝わってきた。

行方不明の息子が見つかった。舞台演出家の夫が2年前に亡くなった。自転車が壊れた。恋人には甘えられない。息子は怪我をしていた。幼い娘を怒鳴りつけてしまう…言葉少ないいくつかのシークエンスから、二人の子供を抱えた女性の焦燥感と孤独が痛いほど感じられる。

夫の墓で落ち葉に抱かれて眠りにつく。うずらが現れるこのシーンが印象に残った。死と同化したような静けさだった。
木漏れ日の中のうたたねはもっと死に近く不穏だった。
繭の中で時が解決してくれるまで眠り続けたい。

子供たちは母を癒そうとする。母もまた子供に還りたい。

冒頭とラストのオオカミ犬、ウサギ、ロバは女性の心持ちの三様を表しているようにみえる。

この痛み、アケルマンの「ブリュッセル1080~」で感じたものに近い。

深い孤独の穴に落ちたら、助かるんだろうか。





以下、独白です。スルーしてください。

連絡取れなくなっていた知人が5年前に亡くなっていたことを数日前に(調べて)知り、ショックでした。その数ヶ月前に会ったときの焦燥感や孤独の印象を重ねていました。死に向かう人は前も後ろも振り返らない。ハムレットみたいに悩まない。吸い寄せられていくんじゃないか。
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