昼寝

家にはいたけれどの昼寝のレビュー・感想・評価

家にはいたけれど(2019年製作の映画)
4.4
なんだかよくわからないが凄いものを観た!この感覚になったのは久しぶり。相変わらず重大な出来事が映らないので、常に何かを見逃している感覚に陥る。ヨーロッパの低予算映画らしく淡白で難解だが、不思議な軽やかさがある。ショットの長短、カメラの距離と動き、台詞の数……ショットを構成するあらゆる要素に自覚的で、強度、リズム、コントラストどれをとっても素晴らしい。序盤、自転車を映したショットの数々はどれも完璧。家の中で子どもたちにキレる主人公、切り返すと男がいる。屋内プールの場面、ロングショットで娘と母を捉えた後のクローズアップの力強さにハッとする。他にも柵を越える運動や、歩きながら喋る横移動の後Uターンして帰っていく映画監督など、物語は曖昧でも映像が深く心に残る。フォークソングが流れる中親子3人がダサいダンスをするシーンや、ラスト脚の悪い兄が妹を背負いながら渓流をゆっくり歩いていくところは意味もわからないまま深く感動する。詳しい事情は描かれないが常に粛々と解放へと向かっている感覚がある。断片的で不可解な構成でありながら、時系列を入れ替えることはせず、決して引き返せない時間の流れが存在していることもこの監督の特徴だと思った。兎を捕食する野犬や、地面に横たえる身体は死のイメージ。ロバ、犬、手と足のクローズアップにブレッソン、棒読みの演劇の撮影にストローブ=ユイレを連想した。
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