せっ

システム・クラッシャー/システム・クラッシャー 家に帰りたいのせっのレビュー・感想・評価

4.3

有り余るエネルギー。

父親から受けたトラウマが原因で自分の怒りを抑えられない重度の癇癪持ちペニーがミヒャという男と出会い、少し心を開く話。

嫌なことや自分の思う通りにいかないことがあると、大声を上げて暴れまくり、高確率で人や自分自身に危害を及ぼす強烈な癇癪持ちペニー。誰もがペニーを見放し、母親と一緒にいたいのに許されず、構って欲しい誰かに甘えたい、という渇望が画面に溢れる。そこまで暴れまくったら頭の線プチってなりそうなのに、全然エネルギーが有り余ってる。

暴れ回れば誰かが構ってくれるし(怒られるのも含めて)、目先の利益はそれで得られてしまう。森で小屋から逃げ出す時も、森の中ではなく結局人のいる所に行く。人を馬鹿にしているような、ペニーに最初は結構イラついた。

でも、ペニーの症状が改善できないことが明確になるにつれ、ペニーに中途半端に手を貸す"優しい"大人達にイラついてくる。ペニーとそこまで関係の無い大人は、その時のペニーの要望を聞いてくれる。母親のとこまで車に乗せていくおばさんしかり、牛小屋のおっさんしかり、後にも先にもペニーに対する責任がないから簡単に手を貸す。そしてペニーもそれを分かってる。

そしてペニーのことを大切に思う大人もまた大切に思うが故に突き放せない。なのに手に負えないと逃げる。でも可哀想だからまた会いに来る。中途半端に優しいミヒャって1番残酷。途中で逃げた母親のがマシなのではと思った。

どうにかして、子供をシステムに組み込ませてあげたい優しい大人達が、システムクラッシャーという呼び名を作ったのだろうけど強烈に皮肉。この子はたぶん、森で1人で暮らすのが1番幸せだ、と思ってしまう爽快だけど残酷なラスト。
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