まる

赤い闇 スターリンの冷たい大地でのまるのネタバレレビュー・内容・結末

4.6

このレビューはネタバレを含みます

うわーー……まじかーーー……現実……。
そういえば公開当時見にいこうか迷って、結局見てなかった作品。このタイミングじゃないと絶対理解できてなかったと思う。ウクライナ……ホロドモール……。こういう歴史があったのね。知らなかった。
これ、みんなが今見るべき作品なんじゃないかな。

真実の語り手って、歴史から消されるんだよね〜……。嫌なあるあるだわ。
政治が報道に干渉しすぎてる。独立させたげて〜……。
権力者が自分の保身のために長いものに巻かれにいく構図って世界共通なのね。

ジョーンズさん立派だった。ジャーナリストとしての姿勢が毅然としてた。
「真実は一つしか存在しない、記者は崇高な仕事だ、誰の肩を持つことなく真実のみを追いかける」
素晴らしい理念だと思った。
真面目で切れ者で心優しい人だったんだと、作品から充分窺えた。

ウクライナに渡る道中から地獄が始まってた。
コートの交換条件、パンやで……?お金はいらない、パンをくれ、ってもう……。農民にとって、もはやお金が無価値であること。お金があってもパンが手に入らないこと。この短い会話が物語ってた。
残り少ないパンを削ってちびちび食べないといけなかったこと、今と全然違うなと思った。
いま私は、お腹すいてない時でも食べなきゃとご飯を食べてる。でもこの時代・この土地ではその逆で、(少しずつしか)食べちゃだめだった。
今の自分がいかに恵まれてるか思い知った。

真っ白な風景にジョーンズさんの黒いコートがポツンと引きで映されてるシーン、この構図好きだった。

現地の子供達の歌、めちゃめちゃ悲惨だった。そうか、こういう所から"意味がわかると怖い童歌"が生まれるのか。

遺体運ぶ台車……。亡くなった母のそばで泣いてる赤ん坊も、母と一緒に台車に乗せて運んでた……。
ジョーンズさん、カメラ構えたけど撮れなくて、それほどまでに残酷だったんだなと推測できた。

亡くなった兄の肉を兄弟で分け合うシーン、凄まじい現実味だった。
最初にあの童歌が出てきた時、最後まで歌わずにおいて、このシーンで見せるやり方、凄いなと思った。
「私たちの隣人はもう正気を失ってしまった。そしてついに自分の子供を食べた。」
あと、樹皮を食べてたっていうのも……。

現地の人との会話を聞かれて、本当のことを話すと現地の人も記者も捕まってしまった。

ジョーンズさんが見てきた真実は、上層部に明確に揉み消された。
既得権益なあ……。
真実を伝えるはずのジャーナリストが、自分の保身のために真実揉み消すとか……現実やなあ……。しかもその人が名誉ある賞取ってんねんからやり切れん。

ここにジョージ・オーウェル絡んでくるんや??!
動物農場ってそういう作品やったんや??!
運命やなあ〜!!!読むしかない!!!
作家の立場で、彼のやり方で真実を伝えたのが立派だと思った。
ジョーンズさんの味方に立ったのは、すごいと思う。

同じくらいの年齢の子供が、方やウクライナで飢餓に苦しみ、方やウェールズではぬくぬくと育ってたんだ……。
しかもウクライナでの出来事はデマだと思い込んでるんだ……。
現実ってこんなに残酷なんや……。

富裕層が農民たちを搾取する構図、ほんとに酷いな。しかも富裕層はそれを隠す。汚点なんか存在しないって態度で。悲惨やな。

真実を語る人が正当に評価される世の中になってほしい。デュランティみたいな人がのさばることのない世の中になってほしい。世の中のジャーナリストが、ジョーンズさんのように誇り高く真実を伝えていってほしいと思った。
まる

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