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赤い闇 スターリンの冷たい大地でのcamusonのレビュー・感想・評価

4.3
1933年。世界恐慌末期。資本主義のオワコン化が叫ばれる中、ソ連のみが景気が良く、工業化への潤沢な投資が世界の注目を集めていました。

過去にヒトラーにインタビューした特異な経験を持つフリーランスの記者(主人公)が、その資金源に疑問を持ち、その説明を聞くためにスターリンにインタビューしようと、ロシアに向かったものの・・・ というような話です。


丁寧につくられた重厚で落ち着いた映像は、品格があり一気に引き込まれました。

主人公は、モスクワに入ったのち、現地の大手紙の記者たちに会いますが、ソビエト側の監視が強く、自由な取材どころではないことを悟ります。

経過は省きますが、自力でウクライナに潜入し、収穫のすべてを取り上げられ、飢餓に苦しむ人々と、手押し車の上に積まれた死体の山を目の当たりにします。

主人公がウクライナに潜入してからのホロモドールの描写については、死者はともかく、生存者はとてもこの程度ではすまない惨状だっただろうと想像しますが、餓死寸前の生存者を再現するのは高度なCG処理でもしない限り難しいでしょうから、致し方ないかなといったところでしょうか。

飢餓のリアルな再現よりは、飢餓の子供たちが歌う讃美歌が響くという幻想的な印象付けを狙ったようで、それも一つの選択肢かなとは思います。

「五カ年計画」、「ソフホーズ」、「コルホーズ」は、学校の教科書で習いましたが、「ホロモドール」は習いませんでした。「ホロモドール」について学べただけでも貴重です。しかし、当時のソ連の情報統制、鉄のカーテンっぷり。そして、その表側と裏側のあまりの違いっぷりには、ホントにばれないと思ったんかねと呆れることしきりです。

大量の奴隷が甲板の下でオールを漕いで進む船を作ってやろうとか、箱の中に人間を入れてハイテク機械ってことにしようとか、そういうレベルの発想ですよね。そういう人間だからこそ、国家元首になってしまうというのが何ともやりきれないというか。

飢餓ジェノサイドとも言われており、呆れて済むことではないのですけどね・・・
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