けーはち

赤い闇 スターリンの冷たい大地でのけーはちのレビュー・感想・評価

3.6
原題は「Mr.Jones」。ガレス・ジョーンズ──ソ連の人為的飢饉、ホロドモールの告発で知られる英国ジャーナリストを取り上げた、骨太の伝記映画。主演は次期007とも噂されるジェームズ・ノートン。185cmの長身と端正で美しい瞳、がっしりの顎が特徴。

ウクライナで教師経験のある母を持つ国際派名士の家に生まれ、多言語を会得した優秀な言語学者である彼は、英国元首相ロイド・ジョージの外交顧問を務め、記者としてヒトラーにインタビューし、次はソ連で母の思い出の地ウクライナへ。だが、そこはスターリンの計画経済、集団農場の名の下で徹底的に搾り尽くされ、餓えた人は木の皮すら剥ぎ、人肉すら貪る地獄絵図!

前半はソ連を取材する外国記者がアメとムチで骨抜きにされ杜撰な提灯記事を書く狂態を、後半は生気がなく暗黒と白銀の世界としてのウクライナの惨状を描く。

主人公がシベリア鉄道の1等車から普通車に乗り移った瞬間にズドーンと画面が暗くなって絶望の飢民の群れの中で彼の食べるオレンジがキラキラ光っているように見えるのが印象的。寂寞と氷雪の中に漂うボロ雑巾のような人々の姿はあまりにも悲しく、劇中での描き方は悲惨ながら荘重である。ただ人肉食のくだりはも〜〜っとバチバチにインパクト欲しかったっす。そこのビチャビチャグログログチョグチョを見せてこその映画だろうが!!(硬派な歴史映画だっての)