福福吉吉

赤い闇 スターリンの冷たい大地での福福吉吉のレビュー・感想・評価

4.0
イギリス人ジャーナリストのガレス・ジョーンズ(ジェームズ・ノートン)はスターリンの統治するソ連(※)の繁栄の秘密を知るため、ソ連に渡るが再三にわたるソ連側の監視により取材は困難を極める。そんな中、ジョーンズは監視をかいくぐり、ウクライナに潜入することに成功する。想像すらできない悪夢のような現地住民の状況にジョーンズは驚愕する。

※「ソ連」=ソビエト社会主義共和国連邦

スターリン時代のソ連の現状を取材し、世界に知らせようとしたイギリス人記者ガレス・ジョーンズの幾多に渡る困難とそれに立ち向かった姿を描いた作品であり、報道のあるべき姿を観客に問う内容になっています。

ジョーンズはナチス・ドイツの脅威をいち早く察知する世界の状況を分析する力に長けていたことが描かれていますが、あまりにも先進的過ぎて、周囲から理解されませんでした。歴史を知っている私たち観客からすると、「ジョーンズの言うことを聞いて」とつい思ってしまいます。
ジョーンズは外交顧問を干されて、フリージャーナリストとしてソ連に取材に行きますが、ソ連の情報操作の網に引っかかり、次々と方法を封じられます。しかし、ジョーンズもあらゆる方法を使って行動し続けます。この方法が本当に悪いものもありますが、そこまでしないとソ連の現状を掴めなかったことが映像から伝わってきました。「報道」が権力と立ち向かう難しさを感じさせてくれました。

また、本作のキー・パーソンとしてデュランティ(ピーター・サースガード)という人物が挙げられます。彼は記者として表彰を受けるほどの人物でありながら、ソ連の情報操作の片棒を担いでおり、なんとも嫌らしい人物として描かれていました。正直、デュランティの生き方の方がジョーンズの何倍も楽だと思いますが、そのかわり「報道」の意義を失うように感じました。

後半にジョーンズがイギリスに戻ってからの姿が描かれるのですが、これがかなり精神的に観ていて辛かったです。命がけで掴んだ情報をないがしろにされるジョーンズの気持ちが痛いほど伝わってきました。

報道に誇りをもっていたガレス・ジョーンズの強い気持ちが現在にも伝わっていると良いなと心から思える作品でした。
観て良かったと思います。

鑑賞日:2023年6月17日
鑑賞方法:U-NEXT
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