くろきつ

赤い闇 スターリンの冷たい大地でのくろきつのレビュー・感想・評価

4.2
世界恐慌の中で繁栄を謳うソ連に疑念を抱いた英国人記者がスターリンへ取材のために訪れたモスクワで目撃した惨状を描いた歴史ドラマ。

五カ年計画の成功を宣伝していたソ連が隠蔽していた飢饉ホロドモールを世に伝えた実在の英国人記者ガレス・ジョーンズの実話をもとにした映画。原題が「Mr.Jones」であることからこの記者の伝記映画であることが分かる。世界恐慌の中でも繁栄を続けるスターリン独裁政権下のソ連に疑念を抱いたジョーンズはその疑念を晴らすため単身でモスクワへと行く。ウクライナに疑念の答えがあると知ったジョーンズはそのウクライナの地で想像を超えた惨状を目撃する。それがソ連が隠蔽していたホロドモールという飢饉。存在は知っていたものの私の想像を超えるものだった。この映画ではジョーンズの旅路がスリリングに描かれていてスリラーとしても面白いのだがホロドモールの惨状を恐ろしいほどに忠実に描写していると思う。凍てつく吹雪が吹き荒れるウクライナの地で歌を歌う子供の姿が印象的だった。そしてもっと恐ろしいのはそれを隠蔽していたという事実。ホロドモールを描いている場面よりも圧倒的に事実を隠そうとする人間たちの場面の方が多い。真実を公にしようとする勇敢なガレス・ジョーンズの行いを忘れてはならないと思った。ジャーナリストのあるべき姿が見れた気がする。大きな力に立ち向かうジャーナリストを描いた映画はどれも胸を熱くするものがある。
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