エイデン

屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカのエイデンのレビュー・感想・評価

-
1970年ドイツ、ハンブルク
ある夜 小汚い中年男フリッツ・ホンカは、アパートの屋根裏の部屋にある女性の遺体から服を剥ぎ取ると、その首にノコギリの刃を当てる
一度 躊躇ったものの酒を飲み、タバコを吹かしたフリッツは、音楽をかけて一気にその首を切断すると身体を次々と切断していく
そしてバラバラになった死体をスーツケースに詰め込むと、それを公園の茂みにばら撒き再び帰宅
興奮冷めやらぬ中、またも酒を飲むフリッツの目の前には、一度には運びきれなかった死体の胴体と右脚が転がっていた
こうしてバー“ゴールデン・グローブ”を舞台として、引っ掛けた娼婦を殺害したフリッツは、特定されないまでも殺人鬼として話題となるのだった
1974年
進学校“アレー・ギムナジウム”に通うペトラは素行の悪さから留年となってしまい、今度同級生となる転校生ヴィリーと出会い、カフェへ誘われる
彼が飲み物を買ってきている間、ペトラがタバコを咥えたところ親切な男に火を着けてもらう
すぐにヴィリーに追い払われたものの、その男フリッツは彼女をいたく気に入り、その夜 ゴールデン・グローブで天使に出会ったとふれ回る
気を良くしたフリッツは店員に頼み、店に集う年増の女達に酒を奢ろうとするが、元来 醜い男である彼は顔を見られるだけで次々と断られてしまう
夜も更け始め常連客だけが残る中、隅に座っていたホームレスの老女ゲルダがフリッツの奢る酒を受ける
しばらくしてフリッツは彼女を家へ誘う
ゲルダは部屋の酷い臭いに顔をしかめるも、フリッツはそれが下の階にすむ外国人労働者のギリシャ人達のせいだと訴えると、酒を飲ませた彼女を半ば強引にベッドへと誘い込む
翌朝 フリッツは下着姿のゲルダに、自分が帰るまでに家を出ろと言い付け、そのまま工場での仕事に向かう
残されたゲルダは部屋の片付けをしていくが、その途中 あの酷い臭いが板で封じられた壁から発せられていることに気が付く
その後 帰宅したフリッツはゲルダがまだいることに腹を立てて彼女を追い出そうとするも、部屋が綺麗に片付いていることと、殴った拍子に外れた彼女の入れ歯が壊れてしまったことを悪く思い、再び部屋に招き入れる
ばつが悪くなったフリッツはゲルダにまた酒をご馳走し話をするが、彼女に娘がいることに興味を持つ
あれこれ質問を繰り返し、肉屋で働いているロージーという30歳の独身の可愛い子だと聞いたフリッツは、顔も知らない彼女をカフェで会ったペトラと重ねていく
ロージーもここへ誘えと命じたフリッツは、ゲルダを家政婦兼情婦のように扱いながら異様な同居生活を始めるが・・・



1970年代に実在したドイツの殺人鬼フリッツ・ホンカを描いた伝記映画

教養も金も無い、酒浸りで女好き、言語障害を持ち、(ドイツ人男性にしては)小柄な醜男
彼フリッツ・ホンカは4人の売春婦を殺害し、世間を震撼させる殺人鬼となった

そんな彼の殺人にまみれた日々を描いた作品
その異常な日常をとにかく淡々と観せられるのが特徴的
画としての不快感は高めで、見た目からやってることまでアレなフリッツ・ホンカ始め、ゴールデン・グローブで彼が引っ掛ける女達もまあまあ歳の行ったおばさまばかり(被害者の年齢は若くて42歳、1番歳上は57歳)
詳細は省くけど純粋にあまり気味の良いものではない

ただまあ個人的にはフリッツ・ホンカの人間味をかなり感じられるところを評価してる
前述のような見た目や境遇から、恵まれていないものの自尊心だけは高く、自分より弱い立場の被害者達を支配して心を満たそうとする点とか、シリアルキラーの心理を的確に観せてくれる
理想の女性を見つけても心で想うだけ、再起を図ろうとしても失敗
その様子は時に滑稽だけど、悲人道的な行為とは裏腹に生々しいほど人間的で、そのコントラストが面白さや恐怖を与えてくれる

ちなみにフリッツ・ホンカ役のヨナス・ダスラーはガチガチの特殊メイクで参戦しており本人はイケメン
演技の上手さも相まってびっくりした

醜悪さにまみれてることは変わりないけど、個人的には嫌いじゃない作品なので観ましょう
エイデン

エイデン