pherim

ゴーストタウン・アンソロジーのpherimのレビュー・感想・評価

3.7
少しずつ何かがズレた、カナダ・ケベックの田舎町。新参の女性は、夜ごと不可解な気配に苛まれている。親しく懐かしき死者たちがある日から、生前の姿で白昼の雪原に黙して立ち始める。ただ切なくどこかユーモラスなその光景の孕む、ふしぎな温もりが心に沁み入る。

この“類縁の死者がふつうにそこにいる感じ”のふつうさがとても良い。こちらとあちらを隔てる膜は、その浸透圧しだいでいつどちらへも浸潤しだすということを、あちらへ取り込まれゆく住人の無感情ともいえない表情で表現する。そこに顔を覗かせる原始の息吹は、雪原ノワール傑作『ウインド・リバー』の隠しもつ妙趣へ通じる。

『ウインド・リバー』 https://twitter.com/pherim/status/1020660175810674693
pherim

pherim