逃げるし恥だし役立たず

イエスタデイの逃げるし恥だし役立たずのレビュー・感想・評価

イエスタデイ(2019年製作の映画)
3.5
冴えないミュージシャンが音楽生活の引退宣言と同時に事故に遭い、目覚めるとそこはビートルズの存在しない世界だった。此の設定からおバカ作品であるのは間違いないのだが、良作かつ爽快な作品。英国サフォークとリバプール、米国ロサンゼルスの映像、展開の切替の手法などの演出も良く、ビートルズの曲に乗せて物語がテンポよく進んでいく。単なる懐古趣味やビートルズの墓荒らしの様な作品ではない。
売れないミュージシャン・ジャック(ヒメーシュ・パテル)がビートルズ作品でスターダムに、一躍スターになったジャックは盗作が露呈する恐怖に苦しむのと同時に永年のパートナー・エリー(リリー・ジェームズ)への恋心に目覚めて葛藤する。最終的に勝ち組か負け組かでいえば、ジャックはミュージシャンとしては負け組になる。だが、ラストで一教師として生徒と歌うジャックの表情はスターの時の辛そうな表情ではなくなっている。成功は捨ててしまったが、最愛の女性との家庭と友人達を選択して人生においては勝ち組となっている。
友人・ロッキー(ジョエル・フライ)のバカさ加減も笑えるが、親父(サンジーヴ・バスカー)の間の悪さの方が面白い。エド・シーラン(本人)の"Hey Dude"へのタイトル変更の提案、好青年・ギャビン(アレクサンダー・アーノルド)のパルプのコモン・ピープルの件など音楽的な会話も面白い。
当方はビートルズ派ではないが、本作に限っては思う存分にビートルズを楽しんでいただきたい。