nt708

男はつらいよ 寅次郎恋やつれのnt708のネタバレレビュー・内容・結末

4.9

このレビューはネタバレを含みます

幸せかどうかなど、今はわからない。それでも20年後、30年後にふとこの時を思い出して「あぁ、自分は幸せだったな」と思えるように毎日を過ごしたい。『男はつらいよ』では、今までに幾度となく幸せとは何かという問いに触れてきたが、今回ほど自分の胸に響く言葉はなかったように思う。

それに加えて、気持ちは伝わらなければ意味がない、という言葉。気持ちを伝えるというのは決して言葉でなく、それ以外の何かでも十分に伝わるものだと『男はつらいよ』を観るたびに感じる。殊に今回は不器用な父親が自分なりの言葉で必死に想いを伝えようとする姿に涙しない観客はいないはずである。寅さんもそうだが、私はそういう不器用で、照れ屋で、表向きは難しそうにしていても、本当は心の優しい人が大好きである。そういう人ほど、人より何倍も苦しい思いをしてきており、だからこそ人の優しさを身に染みるほどわかっているからである。

宮沢賢治の『雨ニモ負ケズ』に登場する男もその例外ではないだろう。私はそんな人間味のある人たちについつい憧れを抱いてしまう。やっぱり、そういうものに私はなりたい、、のだと思う。
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