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アンダー・ユア・ベッドのeyeのレビュー・感想・評価

アンダー・ユア・ベッド(2019年製作の映画)
3.7
アンダー・ユア・ベッド (2019)

どこかで聞いたことのあるタイトルだと
思ってたら作者は大石 圭 氏だった

遠の昔 アンダー・ユア・ベッドの原作を
読んでいたことは思い出したが、、

月日が経ちすぎた結果
もはや肝心の内容を覚えてなかった…

映画は思ってる以上に
エログロ要素が濃厚だった

劇中に千尋の手の甲にフォークが
突き刺されるシーンがある

劇場にいた観客の1人がその瞬間

「あっ!」

と思わず声を出してたのが 妙に印象的だった

この映画は 三井直人の無機質で抑揚のない
ナレーションを中心に展開される

石の裏にいる"名のない虫 ≠ 自分"の描写が
たびたび挟み込まれ 自分を重ねる

誰かの記憶にもまったく残らず
あたかも存在しないかのような存在

三井の圧倒的な孤独さ・寂しさ

そして

救われなさと虚無感が表現されてる

三井のストーキング目的は

11年前のある日 1度だけ佐々木千尋と
マンデリンコーヒーを飲んだあの瞬間の想起

"穏やかな幸せを感じた瞬間を追体験したい"
"もう一度名前を呼ばれたい"

そのために佐々木千尋を見つける決心から

興信所へ相談した結果

「千尋を見つけだす」

という異様な執念をみせる

既に結婚していた佐々木千尋とその家族を
望遠鏡で監視を続け 行動はエスカレートする

盗聴器を仕掛けるのも朝飯前

グッピーの水槽を家に運んだ際に
こっそり鍵を盗んじゃうあたりは

もはや 相当な策士となってる

監視を続ける秘密の小部屋では
昔千尋が着ていたワンピースをマネキンに
着せてカツラと香水をつける

加えて

一眼レフで撮った写真をプリントアウトし
一面の壁に貼るこのシーン

エドワード・ヤン監督

"恐怖分子"/86 

にも同様のシーンが見られ
オマージュを垣間見る

三井がベッドの下に潜り込む暴走行為を
決意してから ある意味で純粋な姿を映す

『オムツ着用でベッドの下に忍び込む』

という赤ちゃん返りにそれは現れる

倒錯的な愛を見せつけるこの手の
ストーキング映画が与えてくるはずの
気色・気味の悪さと狂気があるはずが、、

その部分がありえないくらい全く感じられない
悪人のはずが悪人ではなく何故か
三井の寂しさに共感させられてしまう

何故こうなるのか、、、

考えた結果 一つの答えにたどり着いた

『千尋が受けるDVに対する悲惨さを
三井が何とか救おうとする』

という行動が彼を救世主のように思わせる

千尋を守っているような

いわば 守護霊

それによって千尋自身も妙な安心感を覚える

三井は家庭を壊そうという
不埒な考えもなく
危害を加えるにも至らず

千尋の幸せをただ一心に願っている

だからこそ"三井=絶対悪"の構造ではなくなる
勿論僅かな気味の悪さと苦笑場面はある

しかし孤独な姿勢 と 一途な思いと
繊細な様子が絶妙に組み合わさっている

千尋を演じたヒロインの西川さんも

全裸になったり
DVシーンだったり

身体を張りまくり
最早この映画の肝を感じさせた

DVを受ける千尋を夫から解放させるラスト

罪を背負って自首する三井と千尋が邂逅する

三井の夢であった
千尋から名前を呼ばれたことで

あの悲しみと嬉しさを
組み合わせたアノ表情は

この映画のラストに相応しいと
思わずにはいられないが

同時に救われても欲しいと願う
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