ベルサイユ製麺

放課後ソーダ日和-特別版-のベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

放課後ソーダ日和-特別版-(2018年製作の映画)
3.5
『少女邂逅』のスピンオフなのだソーダ。脚本も監督も同じく枝優花さん。
『少女邂逅』の主人公ミユリとツムギの喫茶店でのやりとりから物語はスタートしますが、ミユリが落ちこぼれてたり、ツムギがお父さんと仲良しっぽかったりて、何処かパラレル感も匂わせます。

…クリームソーダを平らげ喫茶店を出る2人。バイバイしてツムギを見送るミユリ。
《目の前に有る大切な時間。あの頃のわたしは本当に大切にできていたかな…?》
通りを行く女子高生達。友達とワイワイする子達。一人でオドオドコソコソする子。可愛いの自覚してる可愛い子。…を見つめるミユリ…(いつの間にか)リクルートスーツを着ている。その胸に去来するものは…?

一旦、◆です!ここまでがプロローグで、本編に突入するのですがね、ここでかかる曲!エンドロールによると“羊文学”(←スミマセン初耳です)というグループによるものなのだそうですが、イントロから続くギターのフレーズが、スーパーカーの“CREAM SODA”を想起させやがるんですよ!!!!そんなの抵抗出来るわけないよ!一気に胸の中かスカイブルーになって目を伏せちまいますよ…。ずりぃぞ!!


同じ高校に通う女の子たち。
ポニーテールで快活、化粧っ気の無いサナ。いつもお金がない…。
メガネに三つ編み、影が薄くていつもぶつかられては荷物をぶちまけるムウ子。
テンション高めで社交的、現役モデルでインフルエンサーのモモ。
ホントに些細な事でたまたまちょっと関わりを持った3人が、一先ずなんか飲食店に入るかって事になり、どうすベェと悩んでいたところで、ムウ子の提案!「…ココニイキマセンカ?」

…古めかしい喫茶店の二階席。興味津々の彼女たちがオーダーしたのは
クリームソーダ!!!!!


映画の基本フォーマットは、クリームソーダに目覚めた3人が、あっちこっちの街のクリームソーダを食べ(?)て回る+日常系です。因みに喫茶店、及びメニューは実在です!うむ、一先ず千歳烏山の“宝石箱”は行ってみよーっと。
3人はそれぞれの悩みがあって、ムウ子は過去の辛い思い出のせいで直接声を発する事を嫌がり、スマホの合成音声で会話します!モモちゃんは、インフルエンサー・モモを全うすべくありとあらゆる人になごやか応対、食べ物は全てSNSにアップし、しかしダイエットの為に食事制限。そしてサナは、父子家庭で余裕も無いし今後のこと前向きにを決められない…。
まあ凄くティピカルでは有りますけど、実際若者の悩みのかなりの部分は、根源的には人間関係や将来の不安とかみたいな事柄ですよね。中でもサナの“漠然とした不安”は誰しも持っている(持っていて欲しい)悩みです。だから若い人なら共感しやすいはず。
…とは言え、それぞれの事案の掘り下げは割とライトめです。テイスト的にはまさに深夜の食べ物+お悩み解決30分ドラマみたい。実はこの作品、ここに限らず全体的にかなりライトめな印象。リアリティ薄めの台詞回しに、コントっぽくすら有る演技。戯けた調子の劇伴…。いくら80分台の作品とは言え、こんなの有りか?と言えば…不思議となんか有りなんですよ!!これはちょっと言語化出来ない感覚でして…、《若くて可愛い子たちがワイワイしてるのが嬉しいだけなんでしょ?》って言われるとそういう部分もあるかもしれないけど、“だけ”とは思いたくない。…なんすかね?ちょっと他の方のレビュー読んでみます。…………優しさに飢えてる、って事はあるかもなぁ。ぐすん。
恋愛要素は薄め。『少女邂逅』本編みたい緊張感・ストレスを感じるような展開も全く無し。まるで別の世界の作品なんですけど、眼差しの向いてる先は基本変わらないと思います。苦しまなくて済むなら、苦しみが軽くて済むなら、やっぱりその方がいいよ。苦しんだ事自体は決して無意味では無いけどね。苦しみと喜びは対をなしている。

世の男なんて別にどうなってもいいと思うのだけど、出来るだけ早く、女性が心のままに、自由に生きられる世界になるといいのに。その世界は今よりずっと善いと思うんですよね。出来ないとは思いたくない。

“憧れだけじゃ本当は何も見えないなって思うから あきらめだけは夢から覚めても言わないよって、それだけさ”
スーパーカー“cream soda”より抜粋です☺︎

因みに、監督・脚本も『少女邂逅』と同じ方です。鑑賞中、脚本は男性かな?と思ってしまうところもあったのでちょっとビックリ!でも、不思議とホッとしたりも…。