刷子筆男

サイダーのように言葉が湧き上がるの刷子筆男のレビュー・感想・評価

4.0
アニメ映画バブルである。これも、そんな中で単純に損しているのでは。ラノベ文化以降よくある、クソ長タイトルかと思ったのだ……。違った!これ、「俳句」だったのだ。それで、すべて納得がいく。……それをもっと前面に出すべきではなかったのかと思いますが、どうだろう。

腑に落ちれば、極めて真っ当なボーイミーツガール青春映画の快作。興味深いのは、映画の作劇は「時代を反映する」ものと「そうでない」ものとあるけれども、これは完全に前者であること。

東京にいるとつい忘れがちだが、今、日本でほとんどの映画が見られているのは地方のモールのシネコンであろう。この映画のストーリーは田園の中の「ショッピングモール」だけをほぼ舞台として展開し(だから、かなり多くの人は「自分たちの話」としてとらえられるかも)、ヒロインはキッズ時分から叩き上げ人気配信者であり、ツイッター的なものが話のキーになる。

要するに、時代の小道具を反映するタイプの作劇としては、『サマーウォーズ』からきちんと10何年後のアプデを遂げているのだ。同じモチーフから抜け出せないあの監督の近作とは全く別な意味で。ポスト宮崎……などと言われ始めて久しいが、それは数人にあらず。今やそんな人材は、ごそっと出てきた。

意図的にわたせせいぞう漫画のようにポップに振った背景は、CG主体作画の違和感をきちんと消す方向で作用。これもアニメ表現として好感。話の大きな流れは「謎のピクチャーレコード」の探索となるのだが、パンフがもろにそれを模しているのは、かなり驚く。映画パンフは数百冊持っているけど、初めて見た。これは面白い。
刷子筆男

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