いのしん

サイダーのように言葉が湧き上がるのいのしんのレビュー・感想・評価

3.2
8月に引っ越しを控え、ぎっくり腰となった母の代打としてショッピングモールの福祉施設にアルバイトをする主人公のチェリーと、「かわいい」を配信することで世間に知られる、出っ歯と矯正器をコンプレックスにもつライブ配信JKのスマイルが、ひょんなことからお互いのスマホを取り違えて、自身のスマホを取り戻した後から始まる交流を描く。
スマイルはチェリーのアルバイトを手伝い、福祉施設のフジヤマという老人がずっと探しているのだという「YAMAZAKURA」のレコードを、レコードショップの商品を一つずつ確認したり、ライブ配信を駆使して情報を収集したりする。最終的にそのレコードは、ショッピングモールの前身であったレコード製造工場の頃から使われていたのであろうか、福祉施設内に掛け時計として利用されていた。
夏祭り本番の日、踊りに合わせてレコードをかけると、ずっと聞きたいと願っていた自分の妻の歌い声が流れ、それを聴いたフジヤマは涙し、このスマイルによるライブ配信を見たチェリーは、引っ越し先へ向かう車を止め会場へ向かい、スマイルへの気持ちを告白するのであった。
夏らしくて良い。お互いにコンプレックスを持つ二人が、レコードを探すという一つのことに協力して絆を深め、好きになる。恋の始まりってこんな感じなんだなあ。スマイルがチェリーに、夏祭りの日に一緒に花火を見に行こう、と勇気を出して誘うシーンなんて青春じゃないか。