2020年の始まりから衝撃的な映像作品を観てしまった。
確かに子ども向けではある。
でも子どもだましではない。
『すみっコぐらし』なるものをまったく知らずに挑んだので、怒濤の展開オンパレード。
いや、初見さんのためにか、冒頭は登場キャラの紹介で始まるんスよ。展開なんてしないんです。でも僕の頭の中はショート寸前。今すぐ会いたいよ(実家の犬に)。
まず "白くま" と "ネコ" がどこかの部屋の隅でしゃがみこんでる所から始まります。
吹き出しで台詞が出たり、基本ナレーションで進行するので、なるほど、どうぶつ奇想天外や志村どうぶつ園のテンションで観ればいいのだなとこちらもゆるゆるほっこりモードで身構えるわけです。
さむがりで人見知りの白くま~
恥ずかしがりやで気が弱いネコ~
おーけーおーけーすみっコぐらし。君たちもウォールフラワー。なぁに、枯れ木も山の賑わいよ、わっしょいわっしょいしてこうぜ、なぁ!
さて、次の控えめアニマルは~?
と ん か つ
ととととんかつ!?!?!?
とんかつがしゃべった!!!
じゃなくてそこはいいんだけど、白くま・ネコときて次とんかつなの????????えーっと??????????ぶたじゃないの?????
しかも自分はとんかつの中でも端っコの1切れで90%は脂身、口に見える残り10%のピンクの部分がお肉なのとか言ってる!!!!!言ってる!!!!!!!誰かに食べてもらうことが夢ですって、、、、童貞か!!!!!
次のキャラは "エビフライのしっぽ" 。
わああああああああああああああ
いつも残されます。ですって。
ですってよ奥さん!!!!!!
えびじゃねぇのかよ!!!!!
ツッコミがまったく追い付かず、せっかくのほんわかふわふわとした絵と動きなのに癒される隙を微塵も与えてくれません。
自分がペンギンなのか自信がなくてちょっと前はカッパだと思い込んでた "ペンギン?" 。常にヘッドフォンを被り、本の虫であり、絶賛自分探し中とのこと。
本当は恐竜の生き残りである "とかげ"
カタツムリのふりをして殻をかぶる "なめくじ"
…………あー…いやぁ君らも一癖二癖ありそうだけど、おじさんはやっと落ち着いて世界観の理解を深める余裕が出てきそうだよ…。
と思いきや次のキャラは "雑草"
ざ っ そ う ?
俺の認識が間違ってた。
カフカも墓から飛び出て俺の肩にポンと手を置き、わかるわかると共感の頷きをしてくれるであろうこの不条理とシュールはそう、ボボボーボボーボボに対するソレ。
他の登場キャラとしましては
"タピオカ"
こやつらは何故か3体くらいいます。タピオカA、タピオカB、タピオカCです。
"おばけ"
「生命とは…」と思わず遠い目で深くて重い問いを立ててしまいそうになるこの世界観において、彼or彼女は一体なんのおばけなのでしょう。喋るとんかつとエビフライの方がおばけよりよっぽど…。
"コーヒー豆"
喫茶店のマスターをやってます。えっとカニバリズム…?
"ほこり"
なんのこっちゃですがほこりです。「すぐ舞い上がるほどの、ごく細かい軽いごみ」「空中にとびちり、物にくっついてたまる細かなごみ」と国語辞典には書いてありました。親近感がわきます。ちなみに前述のおばけはキレイ好きなのでハタキでほこり達を一網打尽にしようと目論んでいます。 描こうとすれば「県警対組織暴力」にも匹敵するような何かがだいぶデフォルメされてますね。ふふふ
"ふろしき"
このコは公式サイトのキャラ紹介で初めて知りました。もしかしたら紹介されてたかもしれませんが他のメンツと比べると影薄くて。確かに目あったし目合ったわ。すまん。
そして"ヒヨコ?"
考えてみたら成長して姿形が大きく変わる一番ポテンシャル秘めたキャラだな。
とまぁこんな感じで。
劇中だとここまでの紹介は序盤も序盤、冒頭10分ぐらいじゃないですかね?
主要キャラの紹介が終わって、皆さんぞろぞろとコーヒー豆がマスターをやってる馴染みの喫茶店に集まります。エクスペンダブルズで言ったらミッキー・ロークの店ですね。
そこからじゃれあいやボケ&ボケそしてボケを挟みつつボケ倒し、ひょんなことから話が転がり出します。
まぁ言ってしまえば「行って帰ってくる物語」です。
ネットで感想を眺めていると攻殻機動隊とかスパイダーバースといった作品がちらほら挙がってるようですが、ぼくは初代デジモンアドベンチャーを思い出しました。
上映時間65分。
ぶっちゃけ中盤は気を失いかけました。
あんまり知らない他人の、しかも優しくて気の良い奴らばかりで、毒もなく刺激に欠け無害な身内やりとりを眺めていても、退屈でした。体感時間は長かったなぁ。
で、す、が!
終盤では嗚咽が漏れそうになるのを必死で抑えたぐらいには落涙しました。鼻をかむと泣いてるのがバレるのでしばらくだらだら垂れ流しでした。
中盤のいっけん退屈で眠気を誘うやりとり。そのつまらなさにこそ意味がある、とまでは言いませんが、自分自身の思い出を振り返ってみても、他人にすべらない話として披露できるような時間ばかりでは当然ないわけで。共に過ごして来た時間、重ねてきたやりとりが確かに何かになり得ている。そこをキレッキレのスローボールとして放ってきます。ふわふわの粉雪を投げ合ってたかと思いきや最後はガッチガチに固めた雪玉でしかも中には石が…みたいな。160キロ出せる投手にスポンジで出来たボールを全力投球させた…みたいな。
あ、ちなみに、日曜の早朝に起きて一時間半かけてチャリを漕ぎ、一人で某イオンモール内のシネコンで8:30の回を観ました。空いてたのにもかかわらず、せっかくだからと一番すみっこの席を予約。
上映10分前なのに自分の他には誰も着席してなくて、あれ?予約ではちらほら席埋まってたけどもしかして貸し切りか?と思いながら、俺だけの為に流れる劇場版お母さんといっしょの予告を眺めました。2番目に来た家族連れの中の男の子が「お母さんお母さん!ぼくたちだけ!?もしかして貸し切りかな!………あ…」と言っていた気がするのは思い過ごしですかね。
最終的に席の2~3割が家族連れで埋まってました。自分の回は劇中にクスクス笑い声が聞こえたぐらいで基本静寂。終映直後、もう1回観たいと呟く女の子の声が印象に残りました。
好きなキャラは断トツで"ざっそう"
憧れるキャラは"おばけ"
おばけは何気に最初に行って最初に帰ってくるんですよね。独りで。飄々と。