Automne

SKIN 短編のAutomneのネタバレレビュー・内容・結末

SKIN 短編(2018年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

様々なメタファーと風刺に富んでいる。短編としてのテンポ感と発想の勝利の感じがすごい。影や背中のみで親を親と見極められず躊躇なく殺害してしまう男の子が怖い。
けれど感覚的に考えれば、父親と息子の関係性なら影や背中で伝わる空気感はあるだろうし、母が気づくのに子どもが気づかないのがご都合的であり、物語的な分かりやすい皮肉の効いた展開などすべて飛び越えてピュアに動いてしまうのが子供の天性の純潔さだと思っているので、その辺が脚本/アイデア優位で制作を最後まで進めちゃったのか、と思いやや腑に落ちない。結局毒蛇の話も子どもが話してる意味が無くなっちゃってるしね…

黒い背中でも父親は父親だし、と背中に抱きつこうとする子ども、母親が父親だと気づかなくて黒人への偏見からぶち殺してしまう→子どもの顔に血がぶっかかる、くらいのえぐい展開のほうが良かった。
本編はある種予定調和を超えてこず、またプロットや脚本を守ろうとして子供に罪を背負わせるというのは、ピュアな人間が差別的ムーブして悲劇を再生産しているその構造が、"上の世代の歴史や過去の悲劇は関係なく、テンションや世相の空気感で生きてる若い世代の方が悪い"と言われてる感じがしてしっくりこなかった。

それでも私は子どものピュアさと性善説に則っているだけなので、向こうの子どもはもっと残酷だし感性に乏しく闘争的で残虐な可能性もあるので、その辺りがアメリカの"あるある"に当てはまったのであればまあ、という感じ。
この映画の思考でいくと、"どんな人間も環境がすべてであり永久に平和は来ないし差別は終わらないし人間は低い次元で争い続ける(しかも親ガチャのせいで)"という結論になってしまうので、全くしっくりはこなかったけど。笑
その点で監督や脚本の作者は、大人になった今もまだ幼少期のコンプレックスや親との関係性を乗り越えられていないのではないか?と推察する。作品にそういった作り手の無意識の考え方が出てくるのは往々にしてあることなので。

あくまでスノッブに差別を高いところから悲劇ですよねって感じで見て傍観者の態度を決め込むのではなく、私はもっとこれからの未来に希望を持っているし、人類は時代が下るほどに過去の憎しみや歴史を乗り越えて手を取り合えると心の底では信じているので、その辺が絶妙に刺さらなかった。そしてそろそろアメリカのポリコレ勢は表面的な人間の倫理観や態度云々を語るんじゃなくて、黒人を殺戮しまくってかつ奴隷として使役したその歴史的事実にもっと向き合ってきちんとそれを認めた方が良い。でも自分の先祖がそういうことしてたって認めたくないひとは多いだろうし、その辺に蓋をし続ける時点でカルマは収束せず本作のように憎しみはこれからも再生産されてゆくのかもしれない。

とどのつまりプロットとアイデア(入れ墨)は良いのだけど、映画として加速をつけるには一歩足りないかも。けれどアメリカントレンドの人種差別の文脈にこれでもかと乗っかっているし賞とか獲っちゃった意味は十分分かるなあという印象です。
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