ぺむぺる

SKIN 短編のぺむぺるのレビュー・感想・評価

SKIN 短編(2018年製作の映画)
2.0
差別意識に身を浸した人間の末路を描く短編映画。提起しようとしている問題意識には共感しかないが、映画表現として見ると気になる箇所がいくつかあり、手放しに褒められた作品ではないように思う。

ひとつに話が直線的すぎる。なんらかの気づきや発見を促す要素がないのは、この手の映画にとっては致命的(※1)。本作を見て、差別に対する見方が変わった・広がったという人間は、実はあまりいないのではないだろうか(※2)。入り口と出口に高低差がなく、一種の思考停止さえ感じてしまう(登場人物が、ではなく、映画として)。

衝撃的なクライマックスは皮肉が効いているのではなく、“皮肉しかない”ように思えた。有り体にいって中身がない、テーマがぶれている(※3)。差別というのは言われなき苦痛と恐怖の連続であり、そのような意味でも、ああいうケリのつけ方はかえって事態の矮小化につながるのでは。

なにより一番の問題は、復讐方法のアレだろう。アレは…どうなんですかね。非現実か否かはどうでもいいとして、かなりモヤモヤする表現だ。ラディカルかつシンプルなしっぺ返しをというので、得意げにこのアイディアを披露しているのであれば、その程度の映画なのだろう。屈辱を与えるためにアレを持ち出すというのは、特大ブーメランで放たれた侮蔑にほかならない。

表現自体は稚拙でも〈叫びの熱量〉さえ込められていればこの手の映画は満点だと思うのだが、本作はその真逆。訴えたいことの底は浅く、それでいてセンセーショナル、映画としての体裁は綺麗に保っている。一種のブラックユーモアとして見るとそのエグみを面白がれもしようが、そんなエンタメに回収されてよいテーマでもないように思う。全体的に机上の空論感が強く、どうしてもそのとりすました感じが鼻につく映画だった。

コメントにて、ネタバレありの追記(※部分を中心に)をいくつか。
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