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トールキン 旅のはじまりのpikaのレビュー・感想・評価

トールキン 旅のはじまり(2019年製作の映画)
3.5
全てが綺麗すぎていて、漂白され磨かれた展示物のようで、恋愛ドラマの部分は既視感のある凡庸なシーンの寄せ集めで退屈なんだけど、それを差し引いてもあまりあるほど、トールキンの努力と仲間たちとの友情が素晴らしい。描かれ方云々以上にトールキンの情熱や努力や偉業そのものをわかりやすく整理してまとめて見せてくれたこと自体に存在価値がある。
友情部分にフォーカスを当て、「指輪物語」の仲間たちとリンクさせていたり、トールキンの半生があの壮大な物語を生み出したベースになっているという構成なんだけど、トールキンの半生自体がドラマティックなので、孤児から己の努力と幸運の出会いによってサバイブし、伝説を作ったという、その片鱗を見るだけで痺れる。サムはあのサムにしか見えなくてちょっと笑ってしまう(ごめんなさい)。リリー・コリンズが美しすぎるので凡庸だろうと恋愛パートはあって損はなく、むしろスパイス程度に落ち着いてるので邪魔にならない。
クライマックスでジェフリーの母親と話すシーンは泣いた。涙をこらえつつも抑えられず語り続けるニコラス・ホルトの演技がとても良かった。生産性がないことは無意味という母親に対するアンサーが映画の総括的な扱いになってるのも良かった。
ヘルヘイマ!の合言葉で奮起して、言語学の教授に売り込むシーンもいい。その前に仲間の一人が見本を見せる場面の流れも上手い。
見終わってソッコー、トールキンのWikipediaページを読んだんだけど、もう少し映画で見たかったなぁと思わされた。その後の半生も、三男の苦労も劇的じゃないか。片鱗しか描かれていない物足りなさと共に、実在した人物の伝説的凄さを知るきっかけとしては良作だと思う。
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