Ginny

スキャンダルのGinnyのレビュー・感想・評価

スキャンダル(2019年製作の映画)
3.5
やっと見れた―。

宣伝からの派手な印象とは違う、骨太な演技が支える良作でした。
「今」見る意味がある映画です。

「スキャンダル」「ニュース」「世界騒然」
日本の宣伝で使われている言葉です。
騒がせたことは伝わりますし、シンプルに「セクハラで権力者が失墜した」ストーリーであることは宣伝から伝わると思いますが、それがこの問題、映画の本質ではないと思います。面白おかしい題材で済ませないでほしいです。
現実で起きており、大半の男性が意図的に無視しているのではなく気付けていない程に無関心で自分たちの利権に胡坐をかいて女性蔑視し女性が被害被っている問題です。

映画では、セクハラ問題においての様々な女性のスタンスや苦悩と苦しさ、怒りが演技で伝わってきます。
当事者、過去の被害者、自分の立場を守るために黙認する人、仕事を全うするけれどすべきことを貫く人。
どれもリアリティがありました。
セクハラひいてはフェミニズムは複雑な問題であり、全ての人が同じ価値観、意識を共有できているわけではないので性別で分けて敵味方とできるわけでもないです。
女性間で対立したくないです。
一番悪いのは加害者ですから。被害者は何一つ悪くない。

東京2020オリンピックに関わる日本の男性陣の醜聞は、当事者でなくともその日本に生きる女性として地獄ですが、世界で報道されたことは不幸中の幸いでした。
伊藤詩織さんについても、フラワーデモについても、女性専用車両についても、勇気を出して行動してくれる人、支持する人、変えようと頑張ってくれる人に対して目も当てられない酷い勘違いの発言や侮蔑の言葉が投げかけられる日本です。
ジェンダーギャップ指数のランキングにおいても、人々の理解においても、とても酷いレベルにあると思います。

私はおそらくフェミニストなのですが、フェミニズムをしっかりと理解できていないと思い、まず勉強とチママンダ・ンゴズィ・アディーチェさんの『男も女もみんなフェミニストでなきゃ』という本を読みました。
とても読みやすくわかりやすく説明されていました。
単に女性の権利向上とこういった問題の改善策で一言で済まされがちですがこの問題の根源はそこではなく、男性優位を男性にも女性にも小さい頃から沁みこませ、社会がそうなり、女性が不当に不利益を被っている歪な社会の問題であると感じました。

最近テレビで、SNSを通じての性犯罪に巻き込まれないようにSNSの使い方を指導すべきという意見を見ました。
それは対症療法で、根本の解決になっていないと思います。
その対策もあるべきと思いますが問題を解決するためには、性教育の見直しが求められると強く感じます。性教育は性行為だけを教えるものではないです。きちんとした性教育は基本的人権の尊重、個人の尊厳にも通じるものだと思っています。自己肯定感にも。
簡単に触れてはいけないし、簡単に許してはいけない。貴方を大事にして。貴方を傷つけていい人は誰一人存在しない。

それと同様に、セクハラの問題も摘発して加害者が罪を認め罰せられて終わりではありません。セクハラしてはいけません、これがセクハラに当たる行為ですなどのルールや規定を座学で聞くのが正しい対策と思えません。それは対処療法であり、問題の本質理解には及びません。
日本社会におけるこびりついた男女格差の不文律を改めるために、男女平等についての教育・勉強が必要と感じます。
前に挙げた本は、良い題材となると思いますので気になられた方は是非手に取ってみてください。
森さん同様自分の言動の何が問題かわかっていない程に理解不足の人は大勢いると思いますし、一人つるし上げて終わりではないのでこれからも長い戦いが続き、何度も地獄を味わうかもしれません。難しい問題で、私が生きている内に日本では解決されないと思っています、でも改善はしていくと希望を描いています。今現在でも声をあげて立ち上がって改善しようとしている人たちがたくさんいますから。
種を蒔き続け、踏みにじられても流されても悔しくて悲しくて怒りで体が震えて恐怖で体が強張っても、未来のために種を蒔き続けなくてはと思います。

大衆に届く映画で、元となった事実がこうして多くの人に伝えられたことはとても有意義だと思います。
杉本彩さんの言葉で好きなのが「芸能活動は、社会に対してのメッセージがないとやる意味がないのよ。」なのですが、映画にも通じることだと思います。
そういう映画を観客も求め、理解できる社会でありたい!
Ginny

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