ネノメタル

テロルンとルンルンのネノメタルのネタバレレビュー・内容・結末

テロルンとルンルン(2018年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

【これは若き者達の大人に対する視線そのものである】
Ⅰ.ある視点と別の視点から
本作の予告編をみる限り「上田瑠海(通称:ルンルン)(小野莉奈))がひたすら可哀想な作品」と誤解されるかもだが、このルンルン、実際はあどけなさと気の強さとの狭間に揺れる微妙な心情を保ちつつ演じ切ってて心地良いほどである。

やはり小野莉奈は天才だ。
安田あすは(『アルプススタンドのはしの方』)然り、ルンルン然り、はたまた『POP!』における柏倉リン然り全主演作がテイストの違う役柄なのに全てハマってる。
しかも全役柄にどこか芯の強さ・ブレなさとでもいうべき彼女でしかなし得ないオリジナリティがブレンドされているのも特徴か。
そしてそんな彼女を徐々に感情の変化を交えつつ受け入れようとするテロルン(岡山天音)の心情の変化の過程も絶妙である。トータルタイムでは50分ぐらいの作品だが2人の演技(他のキャストもだけどだけ)が上手すぎてそれ以上に濃密な空気を感じるのだ。

或いはこうも捉えられよう。

暴論承知で言うが本作は戦争映画だ。
その舞台は過剰に怯え、俯き加減に問い詰めてくる大人やクラスメートらが支配する日常という名の戦場である。
だからこそそんな破綻した世界に不可視であり続けた2人は魂で共鳴しようとしたのだ。
自宅ガレージに籠城するテロルンが(意外と駆け引き上手な)ルンルンによって徐々に壁が壊され打ち解けてゆく過程がエヴァーグリーンな美しさを讃えている。だからこそ無差別テロの如く彼らを否定する連中に心底怒りを覚える。そして、彼らの未来が肯定性に導かれるよう願って止まない。

あの「ありがとう」という日常で使い古された言葉が銃声の如く心の奥で鳴り響く。
で、なぜこんな事言うのかと言うと、もう公開終了したからここはネタバレありだから思い切って言うが『テロルンとルンルン』のあの感動的なラストシーンって個人的に二回観てからその時も思って、少し時間が経った今尚更その思いを一層強くするんだけど、恐らくアフガンを舞台としたあのアメリカ映画『ローン・サバイバー』から着想を得てると密かに思っている。
「テロルン」も観る前可愛い名前かと思いきや起源は「テロリスト」ってことだったし...
確かにジャンルや雰囲気とか180度別物なんだけどあの「ありがとう」と言うセリフの持つ意味とか位置付けとかに凄く近いものを感じるのだが。

Ⅱ.雑感
因みに、本作は『アルプススタンドのはしの方』キッカケで観る人が多いと思うのだがこちらは同じ青すぎる青でも、静かに燃える青い炎という印象だった。
あと日食なつこさんの主題歌の効果も大きいかな。登場人物とある一定の距離を置きつつ付かず離れずだが語り部として機能する感じは彼女ならでは。
同じ世代の女性SSWでも、ヒグチアイとかだと登場人物の感情に肉薄したり、ハルカトミユキの曲だとドラマティックになって本作品に関してはtoo muchに聞こえるかも。って感じで日食さんの歌声と曲調と
が丁度いい塩梅である。
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