このレビューはネタバレを含みます
街が騒然となるある事件がきっかけで自宅兼会社のガレージに引きこもっている類。
ガレージの窓から飛ばした紙飛行機が
たまたま通りかかった
聴覚障がいを持った瑠海の頭に当たったことで二人が出会う。
瑠海は、トゲのあるバラのようだ。
かわいい見た目に対し、他人を威嚇するような目つき。
常に尖っている。障がいに対して舐められる事を嫌う。
人に助けを求めない。
クラスの女子にイジメられようがやられたらやり返す。
自分のことは自分で守る。
それとは対称に社会とは遮断し、閉じこもることで
自分の身を守る類。
他人からの攻撃には反撃せず、じっと堪える。
頑なに心を閉ざし続ける類だけれど
瑠海の強引な性格により、ガレージの窓越しの二人の関係は距離が少しずつ縮まり、互いにとって心の拠りどころとなる存在になっていく。
二人のふれ合いは、言葉数は少ないけれど
互いの表情から語るものや、空気感がお互いの心を引き寄せる。
類が飛ばした飛行機は、類自身の 現状から変わりたい 外に飛び出したいという気持ちの表れだったのだろうか。
孤独な世界で生きていて、
自分のことを見ていてくれる人がいて
受け入れてくれる人がいて
一人の人間として認めてくれる存在が
自分の心に触れてくれる人がいるだけで
こんな理不尽な世の中だって
その人のために生きたいと、
自分がここで生きている意味を感じる。
類の日常の時間の中で、瑠海のことに思いを馳せ、
彼女の存在が、彼の心を動かし、障害を乗り越えて外に飛び出して瑠海の元に走っていく最後のシーンで
自分のことを思ってくれる人がいるということはなんて幸せなことなんだろうと思うと涙が止まらなかった。
触れて互いの温度を知ることもなく二人は
最後まで窓越しのまま離れることになってしまう。
手の届かない距離となってしまったけれど
これからの人生は
互いの存在が心の支えとなり
二人を強くさせるんだろうなあと思う。
帰り道、映画の余韻に浸りながら
日常で、ふと 今ごろ何してるのかなと思い出すあの人が
同じようにどこかで自分のことを思い出す瞬間があると嬉しいなと思った。
ロケ地である広島県竹原市。
海と山に囲まれた穏やかな空気が流れ
どこか懐かしくノスタルジックな雰囲気の街並みを眺めていて心が落ち着くのは
自分が生まれ育った街に似てるからなんだろうなあ。