horry

作兵衛さんと日本を掘るのhorryのレビュー・感想・評価

作兵衛さんと日本を掘る(2018年製作の映画)
4.0
炭坑は暗い(歴史がある)のではなく、人びとが炭坑を薄暗い気持ちで見ているのだ、というような言葉があったのだけど、炭坑が差別されてきた歴史自体、理解が難しいかもしれない。

そういう難しさ、問題を現時点で共有する困難をおいても、炭坑で働いてきた女性の語りは、率直で強く素晴らしいものだった。

加藤シズエのインタビュービデオで、炭坑の女性と出会い、家族計画の道を突き進む決心をしたという言葉を見たが、あの過酷な労働現場で、たくさんの子を産み育て、家事をこなすというのは、どれだけ大変だったろうか。そのうえ、探鉱が閉められた後は失対(ニコヨン)になる訳だから。

近代化、高度資本主義という道のりで踏みつけられてきた者たちの姿は、少し形を変えただけで、今もある。
人間扱いされていない労働者、働いても貧困から抜け出せない社会。

「けっきょく、変わったのはほんの表面だけであって、底のほうは少しも変わらなかったのではないでしょうか。炭鉱はそのまま日本という国の縮図に思われて、胸がいっぱいになります。」(炭坑画家・山本作兵衛)

できれば、なぜ女の炭坑労働が禁ぜられ、そして再び働くようになったのか、なぜ炭坑労働者は差別されたのか、など、社会的背景を加えてほしかった。
horry

horry